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    新たな国際規格に困惑する中小 ISO39001とは

    2012年3月16日

     
     
     

     ISO39001(道路交通安全マネジメントシステム)が11月に発効する。「全世界から交通事故死亡者と重大な負傷者を根絶する」として、2020年までに世界で10万件の認証登録を目指すという。既に国内ではトラック業界向けにコンサル企業などが喧伝し、中には「道路を利用して仕事をする以上、認証取得は不可欠」と吹聴するケースも現れた。国交省は「あくまで民間の任意制度。まず運輸安全マネジメントをしっかり構築し、その後に導入するかどうかを判断してほしい」と説明している。



     ISO39001は07年にスウェーデンが提唱。対象は「道路交通安全に関わる幅広い組織(企業・団体)」で、トラック、バスなどの運輸会社はもちろん、自動車メーカー、国・地方公共団体、駐車場管理会社など交通事故発生に関与する可能性のある組織はすべて含まれる。認証発効に向けた国際会議は08年6月以降、世界各地で開催され、2月20日のヨハネスブルグ会議が最終回となった。現在、DIS(国際規格原案)からIS(国際規格)への昇格を目指す事務作業が続く。

     日本ではコンサル企業などの動きが活発化する中、歓迎するトラック事業者もいる一方、「運輸安全マネジメントがあるのになぜ今、ISO39001なのか。初期投資は300万円以上と聞くが中小企業にはハードルが高い。大企業に有利な条件がまた一つ増えるだけだ」と困惑する声も。国交省は「批判があることは承知している。しかし、国際規格なので成り行きを監視する必要がある。勝手なものを作られてはそれこそ大変」と説明。運輸安全マネジメントと類似している点については今後、双方を具体的にどう位置付けるか検討中だ。

     大臣官房(運輸安全管理官付)では「運輸安全マネジメントの評価対象にはなる」としながら、「あくまで民間の任意の制度。導入を強制することはなく、市場に(国が)介入することもない」と付け加えた。

     国際標準化機構は39001導入で?ブランド価値向上?人命尊重?物損・保険コスト低減?ビジネスチャンス損失低減――などのメリットを強調するが、一部の学者は「ISOビジネスに世界が踊らされている面も否めない」と指摘。

     「日本では92年のEU統合時、『認証がないと輸出できない』と大企業が慌てて品質管理の9000シリーズを取得。子会社や取引先にまで取得を強要した」。その後、同14001(環境)、同27001(情報セキュリティ)、同22000(食品安全衛生)など相次いで登場し、「認証関連ビジネスは1500億円規模の市場に成長した。市場の活性化を狙い、新たな規格を考え出したに過ぎない」と手厳しい見方。

     ISOは国際標準でも、「元締め」は条約で規定された国際機関ではなく、スイスの国内法に基づき運営する1民間企業。ここに世界中の審査機関や認証機関から莫大な使用料が入る。こうした「仕組み」に嫌気がさしてか、39001も当初37か国の参加でスタートしたが、現在は33か国に減少。

     日本では、ISO/PC241国内審議委員会(中條武志委員長、中央大学教授)が中心に関与してきたが「分厚い書類を作成するだけのISOビジネスが先行し、本当の安全確保がおろそかになってはいけない」と危惧するメンバーもいる。

     PC241は安全先進国として「ヒューマンエラーの特定」をPDCAのD(実施)に組み込む提案をしてきた。ところが先月の国際会議で「(Dに組み込む)必要なし」と判断され、項目から除外されたという。39001の国内審査機関は未定だが「安全指標の特定」など難しい作業もあり、「国内に審査が可能なノウハウを持つ組織があるのかどうか疑問」という関係者も多い。(土居忠幸)

     
     
     
     
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