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    運賃アップを勝ち取った秘策は?(1)

    2012年6月22日

     
     
     

     景気の低迷や燃料価格の高騰で運賃は下落。厳しい状況が続いているが、運賃をアップさせた事業者もいる。
     今回は「運賃アップを勝ち取った秘策」をテーマに各事業者に聞いた。

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    日々の取り組みが大事

     八千代運送(福島昇社長、千葉県八千代市)では、飲料関係の荷主に対し運賃アップにこぎつけたという。「荷主にとっても厳しい経済情勢の中だけに、理解を得られて感謝している」と福島社長は話す。

     その荷主とは6年前に取引を開始。業務は運送だけでなく、倉庫での保管から入出荷作業まで同社が請け負っている。

     昨年3月の大震災後の4月以降は飲料が飛ぶように売れ、同社も忙しく奔走していたが、その後、原発問題が膠着化するとともに徐々に荷動きも落ち着きを取り戻したという。荷動きが落ち着く一方で燃料高騰などコストアップを強いられ、円滑な業務遂行のためにも運賃アップが欠かせない案件となった。

     荷主は、全国発送の際は大手路線業者を利用しているが、その大手と比較しても運賃単価は当社の方が安かった。そうした理由を説明し、運賃交渉に臨んだ結果、荷主の理解を得られ運賃アップに成功したという。

     同社長は、「運賃交渉するにはそれなりの準備が必要なのは当然だが、それ以上に日々の仕事への取り組みが大事だった」と振り返る。同社の場合、商品の保管から配送まで手掛け、いわば商品管理を行っている。荷主の担当者よりも、同社のスタッフの方が商品のことを熟知していたりするのだという。荷主にとって大切な取引相手になることで、運賃アップにつながったといえる。(高田直樹)

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    同時にコストダウンも提案

     川崎陸送(東京都港区)の樋口恵一社長は運賃交渉について、「燃料高騰などの理由があっても、ただ『運賃を上げてくれ』では、先方もコストが余計にかかる話なのだから『うん』とは言わない。コスト増分をどこが負担するかの問題だけでは、要求を聞いてもらえるはずがない」と断言。

     同社の荷主でも運賃交渉に応じてくれる所と、そうでない所がある。応じてくれない所は、更に値下げを要求してくるケースもあると話す。「コスト高の時に対応してくれない所には、こちらも値下げ交渉には応じられない。現状より運賃を下げないことで対応するしかない」。

     一方、現状を理解し、交渉の席についてくれる荷主に対しても「単純に値上げをしてもらわねばならない部分もあるが、その時には一緒に、積み合わせなどが可能な荷物に関し、共配などによるコストダウンの提案も同時にしている。交渉せざるを得ない時をきっかけに、一層の効率化を図って荷主の負担を軽減する提案もするべき」とし、「我々は物流のプロだから、何も努力せずに苦しいとか大変だとか言っていては、先方だって本気で耳を傾けてはくれない」と語る。(小澤 裕)

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    客観的なデータ提示

     金子運輸(東京都練馬区)は、賃上げの交渉が難しい経済状況下で、荷主2社から運賃アップを認められた実績を持つ。

     2、3年前に燃料価格が高騰した際、1社は燃料サーチャージ分を、もう1社は月決め運賃の上乗せに成功した。金子俊一社長は「当初に提示した金額まではいかないが、満足いく運賃で交渉できた」と話す。

     「できるだけ荷主と交渉するようにしている。しかし、話は聞いてくれるが次に進まないまま終わってしまうパターンが多い」という。交渉にあたり、根気強くお願いすると、かえって逆効果になり、荷主から契約を切られてしまう可能性もあるという。

     最近では、荷主側も経済不況を乗り越えるためコスト削減に必死で、「感情に任せて言葉にするだけでは成果は出ない。客観的なデータを提示し、きちんと裏付けをとる。そして納得していただくことが大切」と語る。(半田桃子)

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    人材、サービスに自信

     軽貨物運送事業を手掛ける長原配送(長原和宣社長、北海道帯広市)は昨年、主要な荷主全てに、「1円でもいいから、運賃を値上げしてほしい」と正面から運賃交渉をした。

     「ドンブリ勘定をやめて計数管理をしっかり行うようにし、一つひとつの仕事の収支を把握するように会社の体制を変えた」ことがきっかけ。燃料費高騰に伴う一時的な運賃アップの要請ではなく、「我が社が継続して仕事を遂行出来るような全面的な運賃水準の見直し」が必要と分かり、不退転の覚悟で臨んだ。

     交渉に臨むにあたり、「競合他社には負けない人材を送り込んでおり、サービスの品質で選ばれている」という自信があった。個人事業主を派遣するのではなく、「軽貨物でも100%正社員ドライバー」を抱え、運転マナーや技術に加え礼儀、あいさつ、身だしなみ、言葉遣い、教養など「社員教育を徹底している」ことが根拠だった。

     荷主からは当然、断られる恐れもあった。運賃アップを飲んでもらえない場合は「その仕事は撤退し、売り上げが半減してでも、適正な運賃を確保しよう。会社が半分になったら、そこから新しい基礎を立て直せばいい」と決めていた。 誠心誠意のお願いと、社長の決意が実り、「全ての交渉で運賃アップを飲んでもらった」。荷主から「お宅じゃなくてもかまわない」と言わせない質の高い人材とサービスを日頃から提供した上で、大幅な減収覚悟の一歩も引かない気持ちを前面に出し、運賃アップを勝ち得た。(玉島雅基)

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    数字を明確にして荷主に納得される

     総合的な物流サービスを手掛けるビジネスジャパンエキスプレス(大阪市西淀川区)の大野英樹社長は、「運賃アップの交渉をする時は仕事を辞めるという気持ちでしている」と強調する。

     同社は、最低限必要な運送費の数字を明確に出し交渉している。大野社長は「大体の数字ではなく、軽油代や荷物の量、商品原価などに基づいた数字の資料作りが必要」とし、「相手を納得させられるように持っていける武器が重要」と語る。

     契約をした当初と現在では、時代の変化と顧客ニーズで仕事内容も変わっていると指摘。「現状はすべてが変化している。昔の契約内容では仕事をやっていけない。そのために現状を把握していないといけない」と説明する。

     同社ではドライバーに報告、連絡、相談を徹底させているほか、毎週荷主の担当者と現場を把握しているドライバーでミーティングを実施。「ミーティングでは、ユーザーからのクレームやドライバーが直接聞いた顧客の生の声を伝えることで、お互いに品質の向上を図っている。レベルが上がれば運賃アップにもつなげられる」と話す。

     「運賃アップには、日々の小さな取り組みが重要になる。日頃から運賃が上げられる材料を探すため、ドライバーに少しの変化でも報告するように徹底教育している」と話し、「運賃は限界に近づいている。これからもそういう取り組みを続けながら会社を守っていく」と語る。(中村優希)

     
     
     
     
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