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北海道で進む「リージョナル・ロジスティクス」2
2013年1月31日
北海道で動いている「リージョナル・ロジスティクス」を象徴するのが、「北海道国際輸送プラットホーム(HOP)」構築の取り組みだ。HOPは、道産品の輸出拡大と物流活性化を図るために、冷蔵・冷凍貨物の小口混載輸送サービスをはじめ、マーケティングといった課題を解決し、継続的・安定的に輸出できる仕組みづくりを目指している。これは、輸入に比べて、輸出が極端に少ない北海道の経済構造を改善させる野心的な取り組みで、昨年9月から事業を開始し、運ぶ地域や輸送モードを段階的に拡大している。
道内の研究機関や行政はこれまで、面積が広くて人口が少なく、大消費地から遠い北海道の物流について「効率の悪さ」や「高コスト構造」などの課題を実証的に調査し、様々なレポートで指摘してきたが、問題はその解決に向けて、誰がどのように取り組むかということだった。物流の効率が悪く、コストが高いゆえに、民間企業は手を付けたがらない。これを行政が行うと税金の無駄使いになる可能性も高い。マネジメントとガバナンスの責任をはっきりさせなければ、問題点を知っていても、なかなか手を付けられないものでもあった。HOPは、研究者の呼びかけに対し、行政が応えて事業の運営とサポートを請け負い、これに民間企業が協力するという形で動き出した。日本物流学会の北海道支部長を務めている札幌大学の千葉博正教授は「北海道の物流を改善させ、物流を拡大していくには、地域3PL企業・地域商社といった新たな受け皿が必要」といった構想を長く抱いていた。海外でも競争力のあるはずの道産食品だが、出荷するロットが小さいため、コストや手間を考えると、「輸出したくても難しい」という現状があった。このような潜在的なニーズを満たすために、「誰もが活用でき、安価な物流コストで輸出が可能になる物流の仕組み『地域3PL』を創ろう」というのがイメージだ。単発の実証実験とは違い、「社会の仕組み」として恒常的な運用を考えていた。
これに北海道開発局が呼応し、事業としてスタートした。選考の結果、物流や通関などを担当する民間企業にはヤマトグループが就いた。HOPは企業や協組といった組織ではないため、当面は、出資や利益の配当は考えていない。開発局では、「HOPにかかる予算は特にない」とのことで、公共事業とも性格を異にしている。「輸出を中心とした北海道の物流を拡大するために、それぞれが出来る範囲で協力する」というのが基本的なスタンス。また、「閉じられたメンバー」による排他的な事業ではなく、協力できる企業には常に門戸を開いているオープンなものだ。
事業の窓口は基本的に北海道開発局が担い、物流の実務はヤマトグループが担当。当初は「事業のPR」や「荷物集め」からスタートせざるを得なく、短期的には物流の改善や拡大に大きな効果が出る事は難しいかもしれない。では、これまでのところどのような成果が出ているのだろうか。(玉島雅基)
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