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事業停止にならないために 北海道の事業者の対策
2013年10月9日
「トラック運送業は労働時間が長いのは当たり前。法令を守っていたら経営が出来ない」。事業者の間で半ば常識のように語られ、公然と行われて来たドライバーの長時間にわたる労働や拘束。国交省が行政処分基準の強化を行うことで、これが完全に通用しなくなった。運送事業者の反応と対応策を聞いた。
国交省が9月17日に発表した「トラック事業者に対する行政処分等の基準に係る通達」。この新基準の中で最も注目されたのは「乗務時間の基準に著しく違反」した場合、30日間の事業停止になってしまうこと。具体的には「事業用自動車の運転者の勤務時間及び乗務時間に係る基準(改善基準告示)の未順守が1か月間で計31件以上あった運転者が3人以上確認され、かつ、過半数の運転者について告示に規定する拘束時間の未順守が確認された場合」だ。これは来年1月1日以降に違反行為があったものについて適用されるため、労働時間の超過などが多く発生している各事業所は、あと約3か月で「改善基準告示違反が月間31件以上となるドライバーを2人までに抑える」か、「拘束時間の違反を月間一度もおかさないドライバーを半分以上そろえる」かをしなければ、1回の監査で「30日の事業停止」を受けることになりかねない。
一部には「月間の最大拘束時間の基準を超えているのは函館に向かう便だけ。ここだけツーマンでやるなどの対応を考えており、それほど問題ではない」(北海道苫小牧市の事業者)、「これを機に長距離便をやめて、その分をカバーするために近場の仕事を探しており、何とかなりそうだ」(同千歳市の事業者)、「特定の車に付かないフリードライバーを用意し、拘束時間の平準化のためやりくりしている。また、他社が遠方まで運べないと断る案件が出て来ているので、広く探せば帰り荷の確保もできそう。その場合、2日運行が可能になる」(同北広島市の事業者)などと十分対応できるとする向きもあり、「悪質な事業者を排除するいい機会」(同千歳市の事業者)と話す者もいる。
しかし、多く聞かれるのは対応が難しいという声。同茅部郡の事業者は「函館から関東方面に向う運行は、労働法令を全く守れていないのが現状。函館からだけではなく、苫小牧や小樽からのフェリーも試したが、それでも守れない」とお手上げの様子。
また、同石狩市の事業者は「長距離となる釧路、北見、紋別方面の便は走れなくなる問題に直面している。営業をしても、この地域からの帰り荷が薄く、今でも仕事を断る場合もある。現地に営業所を置くか、手前に中継地点となる拠点を持つか社内で検討している」と頭を悩ませている。
同市の事業者も「札幌近郊の仕事は配車繰りでなんとかなりそうだが、フェリーにからむトラクタヘッドなどは、数時間待ちがしばしば。8時間待つこともある。1月以降は断らざるを得ない」と苦慮している。
札幌市豊平区の事業者は「特定の大手元請けからの下請け仕事のみ拘束時間が大幅に引っかかる。最近は、以前より厳しい仕事を下請けに押し付ける姿勢が顕著になってきている」と仕事を断らざるを得ない様子だ。
小樽市の事業者は「釧路から道央方面まで法定速度を守って運行すると、拘束時間に引っかかる。集荷してもフェリーの時間に間に合わないこともある。荷主に相談すると『他の会社は問題ないと言っている』などと法定速度超過を前提としたオーダーを変えようとはしない」と話す。
このような中、少しずつ出て来ているのが「処分基準の強化をきっかけとした運賃交渉」の動き。石狩市の事業者は「燃料価格の高騰ではなく、労働時間を守るための値上げ交渉を荷主300社に対して行っているが、大きな荷主が上げなければ、他の荷主も上げてくれない。値上げ交渉は引き続き行っていかなければならない」としている。
運送業を専門とするあいち経営コンサルタント(名古屋市中川区)の和田康宏氏は「連続運転時間は比較的守りやすいが、難しいのは1日の拘束時間。対応策としては、ドライバーを増やして各自の休日を増やし、拘束時間を減らしていくこと。運送会社から荷主に対して、労働法令を守らなければ事業停止になりかねないと説明するために、戦略的に情報を提供し、理解を得るようにしなければならない」と指摘する。
ながの綜合法務事務所(札幌市東区)の長野源太氏も「荷主に『今のままの仕事のやり方では労働法令を守れない』と交渉するチャンスと捉えるべき。コンプライアンスを守らなければ輸送業務が続けられなくなると理解を得るよう動いてもらいたい」と話している。
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