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    改善基準の順守状況アンケート「守れていない」6割

    2014年3月20日

     
     
     

    kaizen_0324.jpg 国交省は昨年9月、行政処分の基準の改正について発表した。今年の1月からは「改善基準の未順守が1か月間で計31件以上あった運転者が3人以上確認され、かつ、過半数の運転者について告示に規定する拘束時間の未順守が確認された場合」、その事業所は30日間の事業停止となる。改善基準の順守を一層求められるようになった運送事業者は、どの程度守れているのだろうか。本紙では改善基準の順守状況や見直しの意見などについて調査を行った。北海道から九州まで全国の運送事業者369社(有効回答数363)から回答を得た。



     改善基準の規定を現状で「守れている」と回答したのは38.8%、「一部守れていない」は51.2%、「かなり守れていない」は9.9%となり、しっかりと守れていない事業者が約6割にのぼった。

     「一部守れていない」「かなり守れていない」と回答した事業者が「特に守ることが難しい」項目としてあげたのは、「拘束時間1日原則13時間」で44.6%。このほか、「拘束時間1か月原則293時間」は32.4%、「拘束時間1日最大16時間」は27.0%、「拘束時間1か月最大320時間」と「運転時間2日平均で1日9時間」は23.0%、「休息期間継続8時間」は21.6%が特に守れないという結果となった。回答者全体で見ても、「拘束時間1日原則13時間」は27.2%、「拘束時間1か月原則293時間」は19.8%、「拘束時間1日最大16時間」は16.5%が特に守れないとしている。

     改善基準の現状の規定について「厳しすぎる」と捉えている事業者は47.1%と半数近くにのぼり、「妥当」が33.9%、「もっと厳しくしてもいい」が9.1%となった。また、行政処分の基準が改正されたことについて「厳しすぎる」が44.6%とこちらも高い数値を示し、「妥当」は33.9%、「もっと厳しくしてもいい」は11.5%となった。

     これらの結果から、全体の半数近くの事業者は「改善基準を守ることは厳しい」と捉えており、2〜3割の事業者が「拘束時間の規定を特に守れていない」実態であることがわかった。事業規模で見てみると、100台以上を保有する比較的大手の事業者は、改善基準を守れている傾向にあった。450台を保有する首都圏の事業者や、120台保有の首都圏の事業者、187台保有の中部の事業者などは「改善基準を守れており、処分基準の改正は妥当」としている。150台保有の首都圏の事業者や200台保有の首都圏の事業者、750台保有の関西の事業者、100台保有の関西の事業者などは「改善基準を守れており、処分基準をもっと厳しくしてもいい」と回答した。これらの事業者は「告示ではなく法律にすべき。現状の改善基準が守れないのは経営者側の論理。守らなければドライバーを殺すことになる」「36協定さえ守っていないのだから、法制化して厳格に対応すべき。今は改善基準違反について罰則がない。だからバスの事故などが多発している」「労働時間の問題はこれからもっと厳しくなる。守らなければ、経営そのものがやっていけなくなるのでは」といった意見が出ている。

     しかし、回答の多くを占める中小企業ではそのようにはいかず、「業務の実態と法律がかみあっていない。中小企業の実態を知ってほしい」(6台、関西)、「労働局が繁忙期だけをピンポイントで時間を取っていくのが厳しい」(90台、北海道)、「安全のため基準は守るが、それなりの運賃がとれる施策が同時に必要」(13台、中部)とする声が聞かれた。また、中小ではとりわけ拘束時間や休息期間の規定について見直しを求める意見が多く、「荷待ちが拘束時間ではなく休憩期間にしてほしい」(38台、関西)、「車内の休憩が拘束時間になるのは疑問」(21台、関西)、「16時間以上の拘束の際、翌日の就業まで休息期間を12時間空ければいいなど変えてほしい」(20台、首都圏)といった声が目立った。

     このほか、「運送会社だけの努力では改善基準をしっかりと守ることは難しく、荷主側にも問題がある」とする指摘も多く、「改善基準は運送会社が守ることと同時に荷主企業への周知が必要」(15台、首都圏)、「なぜ違反したかの背景まで調べるべき。荷主も同罪にすべき」(25台、首都圏)、「実運送会社だけではなく、荷主や大手運送会社からの発注内容、運行指示に問題があるのでは」(95台、東北)、「荷主に対して、時間にゆとりのある配送計画をしていきたいが、ルート配送便などは配送時間が決められているため、連続時間が4時間を超えてしまう。荷主に対して周知してほしい」(32台、首都圏)といったコメントが見られた。

     地方からは「全国一律の規定」であることへの疑問が投げかけられ、「日本全国、同じ基準がおかしいのでは」(15台、北海道)、「北海道内限定の基準が必要(地域別にしてほしい)」(15台、北海道)など、地域の事情や特性にあった規定を求める声が多く聞かれた。改善基準のうち、具体的に見直してほしい規定として「1日原則13時間の拘束時間を15時間に」「1か月の拘束時間を原則293時間から300時間に」「休息期間を8時間から6時間に(最大拘束時間を18時間に)」とする意見が複数あった。このほか、「1日最大16時間の拘束時間をアバウトに。実働時間で考えてほしい」「連続運転時間は9時間ではなく、距離制に」「拘束時間から明らかな待機時間を削除してほしい」「運転時間2週平均で1週あたり44時間から50時間に」など、様々な声があがった。

     改善基準は、労働基準法の規定に直接の根拠を持たないものの、?関係労使の代表を加えた小委員会での検討結果に基づく?その検討結果に基づき、中央労働基準審議会という公的機関から報告がなされた?労働大臣が告示として官報に掲載し広く一般に公表した??ことなどから、関係当事者はこの告示の順守が要請されている。しかし、しっかり順守できている事業者は4割にも満たないという調査結果が示すとおり、いまだに「理想と現実の距離は大きい」ことがわかる。

     
     
     
     
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