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    ハイウェイ・オーソリティ進むか 阪神高速料金改定を見る

    2014年5月7日

     
     
     

    hankou_0505.jpg 規制緩和による市場創出、経済成長を掲げるアベノミクス「第3の矢」の3本目。トラック運送業界の利害に直結した高速道路施策も、3本目の矢の成否に左右される大きな問題がある。ハイウェイ・オーソリティ構想と呼ばれる高速道路の効率的運営が、地域・地方への権限移譲と絡んでくるからだ。消費税率の引き上げにかき消された高速道路料金の改定に苦しむトラック運送業界の現状は、「進まない権限移譲」からもたらされている側面があることを再度、確認したい。



     4月からのETC料金が普通車で10円から30円、大型車で30円から50円引き上げられた阪神高速道路。現金車では一律、普通車30円、大型車50円の引き上げだ。阪神高速はちょうど2年前の4月から、走行する距離に応じて通行料金が段階的に上がる「距離料金制」を敷いている。ユーザーから見て「実質の値上げに当たる」としてトラック運送業界からも反対表明が上がった。距離に応じて料金が変わるため、今回の消費増税に際しては距離ごとに消費税額も変わることになる。今年4月の引き上げ額に幅があるのはそのためだ。

     消費増税への対応と聞けば、だれしも「仕方ない」「料金そのものの引き上げには当たらない」と思いがちだ。では、消費増税分以外の阪神高速の収支計画は順調に進んでいるのだろうか。阪神高速は料金改定申請時に、出資などを受ける関係自治体からも承認を受ける必要がある。承認を与える自治体の一つ、兵庫県は「阪神高速、国にずっと注文を付けている」(高速道路室)ことがある。それが、利用しやすい高速道路料金体系の実現だ。

     例えば、NEXCO西日本管轄の高速道路と阪神高速の接続部分は兵庫県内だけでも数か所あるが、料金は別々にしか徴収されない。純粋に距離に応じて料金を支払う場合とではユーザーから見て割高になっている。高速道路室は、「シームレス(継ぎ目なし)、都市高速道路ネットワークの一元管理をずっと求めてきている」と話す。大阪などの関係自治体と勉強会なども持つ。

     県がこうした行動を取るのは、効率的な高速道路運営ができていることを前提とした高速料金と、2重徴収などを前提としたものとでは高速道路建設費用の償還に大きな差が出るからだ。消費増税にあわせて阪神高速から県が承認を求められた際の資料によると、2014年度の収入見込みは約1800億円。ところが、距離料金制が敷かれる以前に関係自治体に阪神高速が出した資料では、同じ14年度の収入見込みが年間約2000億円とされていたことが本紙の調べで分かっている。つまり、2年間の間に収入見込み額が200億円減少してしまっている、もしくは減少するとしか予測できなくなってしまっているのが現状、ということだ。

     また、1日の通行台数予測も年を追うごとに値が下がっている。昨年3月時点では将来、一日平均83万台が走るとされていた予測値が、今年3月時点には82万台へと下方修正されていることが県が保有する資料で読み取れる。

     一方で、収支を支える通行台数が減少するにも関わらず、今から16年後の2030年には収入が2290億円になるとの楽観的すぎる予測もある。仮にこうした数値を現行の制度のまま実現しようとすると、通行料金単価を引き上げるという選択肢は将来的に最も濃厚なものだということになる。

     県を始め大阪などの関係自治体は、2年間の間に収入見込みが200億円も引き下げられる予測についても、「調査する権限がない」(同)として、モノが言えない状態だ。距離料金制に移行した際、大阪の地方議会の議員の一人は本紙に、「承認権限を行使して値上げをできないようにしたかった」と話した。しかし、国との交渉余地を残して地域への権限移譲を唱える行政側に押されてしまったという。

     権限移譲によってシームレス料金など弾力的料金体系への意向か、それとも承認拒否か。それは、3本目の矢が的を射るかそれとも折れてしまうのかにかかっているとも取れる。

     
     
     
     
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