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    猶予期間(支払いサイト)と手形 資金繰りに苦しむ運送業者

    2014年6月9日

     
     
     

    tegata_0609.jpg 運送事業者にとって、取引代金の締め日から支払日までの猶予期間(支払いサイト)の長さは、経営に大きく関わる要素の一つと言っていい。運送業界は総じて報酬の支払いが遅く、手形支払いの習慣がいまだに根強く残っている事業者もあるようだ。資金繰りがうまくいかなければ、2か月近くほぼ無収入という状態もあり得る。支払いサイトと手形について、どのように対処しているのか、事業者に話を聞いた。



     大阪市此花区の事業者は「手形での取引がいまだにある。支払われるのが4か月先などになると、それまでの期間、資金をプールしておかなければならないので経営が厳しい。他の事業者でも、30万円を先に支払われ、残りは手形で3か月先にようやく支払われるというケースがあるようだ」と厳しい現状について話す。

     大阪府東大阪市の事業者は「大手の場合はファクタリングを利用するので違法にはならないが、例外として大手で125日のサイトがある以外は、基本的には長い支払い期日の会社とは取引をしないようにしている」と話す。また、「下請けに仕事を依頼する際は、他の事業者が60日サイトを多く採用している中で、50日に短縮することで差異化を図っている」という。支払いサイトの短縮は会社の魅力にもつながるというわけだ。

     他の業界では支払いサイトはどの程度で、どのような形で支払われているのだろうか。日本書籍出版協会調査部の担当者は、「書籍が発行されてからの支払いが多い。原稿が出来上がり、出版物になってからの支払いであるため、支払いサイトが長いといえる」と話す。

     全国建設業協会の担当者は、「官公庁の依頼での建設の場合は前払いが主流となっているが、民間の建設では『契約時に1割、建設途中に1割、完成時に8割』という支払いが多く見られる」と話す。他の業界も、支払いサイクルと資金繰りに苦しむことが明らかになった。

     下請代金支払遅延等防止法では、親事業者が資本金5000万円超で下請けが同5000万円以下(個人含む)の場合と、親が同1000万円超5000万円以下で下請けが同1000万円以下(個人含む)の場合、親は下請け支払期日について、給付を受領した日から60日以内で、かつ出来る限り短い期間内に支払わなければならないという規則がある。

     万一、下請け代金を期日までに支払わなかった場合は、給付を受領した日の60日後から、支払いを行った日までの日数に、年率14・6%を乗じた金額を「遅延利息」として支払う義務が生じる(中小企業庁のHP参考)。先述の東大阪市の事業者は「ドライバーを守るために、支払い条件の悪い場合は断ることも必要。まずは取引時に交渉をきちんと行うことが大事なのではないか」と話す。

     もし条件が悪い場合があれば、中小企業庁の「下請かけこみ寺」などの公的機関に相談するのも一つの手段。「下請かけこみ寺」の運送業関係の問い合わせは平成25年度だけで1000件を超えており、給付内容の変更や取引中止、損害賠償についてなど、多くの助言をもらうことができる。

     中小企業庁のHPでは、「現金払いから回し手形での支払いに変更を一方的に言われた場合では、注文書の支払方法が現金払いという条件で請け負っているので、従来通りお願いしたい旨を交渉してはどうかと助言した。交渉の結果、従来通り現金払いで支払われたケースがある」というモデルケースを掲載している。

     運送業界は、いつも弱い立場であるからとしりごみするのではなく、業界全体の地位向上のためにも、取引先との交渉は不可欠ではないか。条件を受け入れる場合でも、交換条件として現金値引きやリベート(一定期間の取引高や取引数量を基準として支払われる代金の割り戻し)、これまでサービスとして行っていた作業を取りやめるなど、方法は多岐にわたる。

     
     
     
     
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