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    高齢者雇用の現状 人材不足で活用の動き「社内体制整え」

    2014年7月4日

     
     
     

    koureisya_0707.jpg ドライバー人材確保が困難を極める昨今、事業者の中には積極的に高齢者を活用しようとする動きがある。高齢者活用に積極的な事業者では、高齢者特有の課題に対応するための仕組み作りや社内体制を整えている。定年の引き上げなど、国を挙げて進められる高齢者雇用の環境下にあって、業界でも効果的な活用を模索する中で成果を上げている事業者がいる一方、当事者の「引き際」の問題など、運送業ならではの課題も見えてきた。業界における高齢者雇用の現状を追った。



     国交省は先月27日、「事業用自動車の事故発生状況と中間目標の達成状況」を発表した。これによると、緑ナンバーのトラックが第一当事者となる事故は、平成25年度で約2万3000件(前年度比マイナス1000件)と年々減少傾向にある。一方で、60歳以上に絞って見ると、平成24年度では全体の3分の1(約7500件)が60歳以上の高齢者によって惹起された事故であり、事故件数、死亡者数ともに増加傾向にある。業界でも、高齢ドライバーによる事故のリスクは、かねて指摘されているものの、昨今、人材不足の深刻化に悩む事業者が増加するなかで、仕組みを整えた上で高齢者をむしろ積極的に活用しようとする動きがある。

     東日本産業輸送(千葉市中央区)は、50歳まで昇給があり、その後60歳で定年退職の手続きを取った上で、会社と本人の同意を条件に1年契約で再雇用している。また、田代商事(千葉県浦安市)では定年を63歳とし、それ以降は本人の希望で65歳まで1年契約の再雇用。65歳から68歳までは半年契約に変更し、適齢診断を活用している。

     多くの事業者で、60?65歳を定年とし、その後は社内規定を設けた上で再雇用を行っているほか、配送件数を減らしたり、「65歳で一旦退職金を渡し、アルバイトとして週に2、3回、年金支給額に影響しない程度(約10万?15万円)の勤務」(大賀運輸、東京都世田谷区)など、物量の波に年金受給者の活用で対応している事業者もあった。

     さらに、「定年後は体力・技術面を考慮して助手や作業員に配置替えしている」(中山運送店、東京都世田谷区)や「荷役がきつくなってきた者の受け皿としてタクシー部門をつくった」(さとうピアノ運送、さいたま市)など、ドライバーの高齢化を見越して積極的に事業展開を図る事業者も存在していた。こうした高齢者活用の前提には、運転など安全面での心配がないことがあり、事業者は健康診断や適性診断の結果の活用、契約期間を短くし面談をこまめに行うなど対策をとっている。こうした適正管理があっての高齢者活用といえる。

     だが、一方では「定年65歳としているが若者が入って来ず、そのままでは仕事に対応できないので、本人の希望も聞いた上で70歳まで雇用している」と言う事業者(横浜市)もあり、「引退のさせ時は本人の申告によるところが大きく難しい課題」「再雇用後、(引退時期の)取り決めがないため、どうするかは未定で、本人や従業員らと相談しながら決めることになる」(千葉県内の事業者)と、不安を口にする事業者もいる。

     さらには、実際にあわや大事故という経験をした事業者もある。「3、4年前、当時67歳のドライバーが構内で駐車しようとバックしたところ、本来入れるべき所ではない所に入れてしまった」と話すのは東京都内の事業者。「フェンスを突き破り、もうちょっとで河原に出て土手から転落寸前という状況だった」と言うが、当の本人は自分ではいつも通りに入れたつもりと弁解した。本人も運転への自信をなくしたことと安全面を考慮し、これを機に退社に至ったという。

     一方、神奈川県内の事業者は、「基本は年齢に関わりなく、やる気があれば働いてもらう」という方針でいるが、高齢者の場合は能力の個人差が大きいことから、「技術や視力の低下を本人も見過ごし、構内での軽微な事故に発展する場合も少なくない」と指摘する。しかし、「働きたい者にはできるだけ仕事をさせてやりたい」との同社社長の思いから、なかなか辞めさせることができないのが現実だという。

     年齢に応じた管理を行い、能力が落ちたらトラックから降ろすなど、高齢者の活用には社内体制の構築が不可欠だが、現実には、「人材が足りない」「運送一筋で、配置替えをしようにも仕事が与えられない」「長く働いてくれたドライバーをむげにできない」といった事業者側の事情や恩情もあり、高齢者の活用と安全運行の確保にギャップが生じている。

     「トラックを降りたあとの高齢者の受け皿として3PL的な事業部を立ち上げる」と、ドライバー以外での高齢者活用を模索する事業者もあるが、会社を守る上でも、活用もさることながらドライバーとしての能力の見極めや引き際に対し、「事故の危険性を考えると、そういうときが来れば、毅然とした対応も必要」(千葉県内の事業者)という声もある。

     
     
     
     
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