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    「知らぬ間に運び屋に」コンテナの中に大量の偽ブランド品

    2014年8月8日

     
     
     

     国際海上コンテナの場合、現行法では荷受人の許可なしにコンテナを開け、中身を確認することができない。コンテナ内の積み付けが悪いために荷崩れを起こし、トレーラが横転するなど重大な事故につながるケースや、コンテナの中身に危険物が含まれていても、ドライバーには知らされないまま輸送されるケースがあり、問題視されている。中には、コンテナに違法物を紛れ込ませ、知らない間に運送会社が運び屋をさせられてしまうという事例もある。神奈川県では、無実の運送会社に疑いがかかり、税関のガサ入れ(強制捜索)まで受けることになったケースがある。



     豊心運輸は、国際貨物の運送代理や通関業務の代理を行っている運送会社。平成24年4月25日に突然、裁判所の令状を持った横浜税関調査部がやってきた。「関税法違反」の容疑だった。同社が韓国の荷主から依頼され、通関手続き代行と運送代行を担当し、国内の米軍基地の店舗に納品していたコンテナから、大量の偽ブランド品が発見され、同社は共犯関係にあるという容疑がかけられてしまった。全く身に覚えがなかったが、事務所のほか社長や社員の自宅にもガサ入れされ、パソコン、帳簿、自宅の私物に至るまで多数が差し押さえられた。同社は荷主に問い合わせたが、コンテナの中身が開けられたことを知るやいなや、連絡が取れなくなった。密輸入が発覚したことを知り、逃亡したのだ。

     同社の厚木営業所で、所長として荷主との取引を担当していた箱崎健悟氏は、税関から9回に渡る事情聴取を受けることになる。箱崎氏は「コンテナの中身は知らなかった」と答えたが、担当官からは「全部吐かせてやる」「貨物が偽ブランドだと知っていただろ」「最後には謝らせてやる」と怒鳴りつけられた。「完全に犯人扱いだった」と箱崎氏は語る。

     同社に対する税関と警察の取り調べが終わり、差し押さえられていた物が返却されたのは平成25年7月19日で、実に1年以上が経過していた。捜査の結果、豊心運輸が密輸入に加担しているという証拠は何ひとつ出てこなかったが、税関の調査対象になったことは大きな影響をもたらした。多忙な業務をこなしながら事情聴取や捜査協力にも応じなければならず、パソコンや帳簿が押収されたことで業務に支障をきたしたほか、税関が行った検査にかかった費用を負担することになった。さらには、調査対象となったことが原因で、長年付き合ってきた通関業者からも取引を断られてしまった。同社は税関に対し書面による謝罪を求め、税関長宛てに内容証明書を送ったが果たされず、社会的な名誉は回復されないままだ。裁判で争うことも考え弁護士に相談したが、多額の費用がかかり、勝訴する見込みは薄いと言われ断念した。

     通関の際には、X線検査や開披検査(コンテナから対象貨物を取り出す検査)が行われる。麻薬や拳銃、偽ブランド品などの知的財産侵害物品がコンテナに入っていた場合、通常は同検査で発見される。しかし、今回のケースでは同社が運んでいた荷物の納品先は米軍基地だった。このことが隠れミノとなった。

     事件発覚当時は、米軍関連の荷物は簡単な書類チェックだけしか行われておらず、税関がコンテナの中身をチェックするということは行われていなかった。「米軍から免税物品輸出入申告書(USFJ380)が提出されている貨物に関しては、米軍基地に入るまで、米軍のみしか開けることはできない、というのが業界共通の認識だった」と箱崎氏は話す。「米軍の免税証明書は免罪符のようなもの。当時は、税関でのX線検査もなく、すぐに輸入の許可が下りた」と付け加える。米軍関連の貨物はアンタッチャブルで、長年に渡り、通関業者や運送会社はもちろん、税関さえもコンテナを開けて検査することはなかった。

     豊心運輸が、同じ荷主の荷物を扱ったのは計13回。横浜港からコンテナを積み、キャンプ座間やキャンプ富士といった米軍基地まで運んでいた。20フィートコンテナいっぱいが、すべて偽ブランド品だったというから膨大な数だ。その後の調査で、偽ブランド品は米軍基地の店舗から、別の運送会社によって大阪へと運ばれていたことがわかっている。犯人は米軍基地を経由することで、当局のチェックをかわしていたのだ。

     箱崎氏は「米軍関連の荷物ということで今までろくにチェックもせず、許可を出してきたのは、ほかならぬ税関自身。なぜ、自由にコンテナの中身を見ることもできない運送会社が犯人扱いされなければならないのか」と憤りを隠せない。「税関をはじめとした行政が、しっかりとした制度や体制を整えてくれなければ、運送会社は安心して荷物を運ぶことができない」と訴える。

     
     
     
     
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