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ネットスーパーの現状 利用数伸びているが採算確保に苦戦
2017年7月14日
スーパーマーケットの店頭にある食料品や日用雑貨を配送するサービスとして2000年に、西友が大手スーパーで最初にサービスを開始したネットスーパー。インターネットやスマートフォンの普及により、市場が拡大しているネット通販だが、ネットスーパーの採算確保は苦戦を強いられているという。利用件数は伸びているものの、輸送コストや人件費などの影響で黒字の確保が難しく、収益性向上が課題となっている。大手スーパーや量販店、サービスの核となる配送を担う運送事業者に、ネットスーパーの現状と課題について聞いた。
セブン&アイ・ホールディングスのイトーヨーカ堂が運営するネットスーパーの取扱量は16年度の売上金額・受注件数ともに前年度をクリア。首都圏の30代後半から40代前半で子供のいる既婚女性が最も多く利用している。同社は、ネットスーパーを運営していくうえで、物流に関してはコストの問題があると認識。少子高齢化に向けてネットスーパーは重要なサービスになると考えており、利用者にとってのサービスレベル向上が大きな目標としている。イオンリテールが運営するイオンネットスーパーの利用が拡大している。働く女性や単身者、シニア層の増加で、前年比2ケタ増の伸び率となっている。都市圏に住む30?40代の共働き世帯・子育て世帯が利用者として最も多い。ネットスーパーを運営するうえで課題となるのが物流で、変わりゆく利用者のニーズに合わせ、効率的に運営できるように模索しているという。また、サービスについては、利用者のライフスタイルが多様化するなか、ニーズに合わせて柔軟に変化していく必要があるとしている。
西友では、ネットスーパーの取扱量について「年々、増加傾向にある」とし、「昨年の西友のネット通販ビジネス(ネットスーパー+ビッグセーブ)の売り上げの伸びは20%増」だったという。首都圏を中心に大都市圏での利用が多く、利用者は30代から40代が60%強だった。ネットスーパーを運営するうえで様々な課題があるなか、西友では業務の効率化に注力し、オペレーションの最適化に努めている。今後の取り組みとして、CAP数の拡大、配送時間帯の追加、受け取り方の多様性実験を行っていくとしている。ECビジネスは、ウォルマートがグローバルで注力している分野であり、西友にとって成長に欠かせないものと位置づけている。また、アマゾンフレッシュの登場には、「生鮮食品もネットで買うという購買行動が広く認知され、マーケットの活性化につながる」と期待している。
大型スーパーや量販店では、ネットスーパーを重要なサービスと位置付けており、サービスの向上が最も重要な課題として考えている。一方、商品を利用者に直接届ける運送事業者からは、効率化や運賃についての意見が多く出た。ネットスーパーの商圏分析と配送を請け負うケイソー(千葉県柏市)の伊藤淳社長は、「日本で初めて当日配送を実施した柏市の農産物直売所に宅配事業のコンサルを委託され、その経験をネットスーパーにもビジネスとして生かしている」と話す。「我々運送事業者は、利益が取れる仕事でなければ続けていくことはできない」とし、そのため「ネットスーパーの商圏分析からやっている」という。運営会社と、こうした分析を行ったネットスーパーについては、比較的早く黒字化を達成している。これまでの分析から、注文率が多いのは23歳から30歳の若い世代で、特に0歳から3歳くらいの子どもがいる家庭が最も利用していることが分かったことで、どのようにターゲットを取り込んでいくか、運送事業者としてできる営業を行っている。
首都圏の大手スーパーや量販店と契約しているルーフィ(渡辺泰章社長、東京都中央区)。軽貨物自動車400台を動かし、ドライバー1人が1日平均35件のネットスーパー配送を行っている。ネットスーパーの課題について谷泰一常務は、「運営側にはピッキングの人手不足と在庫切れを改善してもらいたい」とし、「特に在庫切れは、配送までに時間がかかるだけでなく、利用者が離れてしまう恐れがある」としている。また、「エリアや時間帯の見直し、便数の見直しで配送効率を上げることが必要」としたうえで、「ドライバーの労働環境を良くして、適正な対価を得ることができなければ、ネットスーパーの配送は厳しくなってくる」との考えを示した。
日軽東京(同立川市)の木全弘太郎社長は、「ネットスーパーの取扱量は増えている」としながらも、「スーパー側のピッキング作業が追いついていないのが実情」と課題を話す。「利用者の年齢層は30代から40代と比較的若い層に多く、高齢者はネットを使いこなせていないと思われ、多くはない」とし、「ネットスーパーの需要は今後も伸びていくだろうが、ネット通販に比べて物流システムが確立していないため変化していくのでは」としている。事業者にとって、ネットスーパーの単価が安いことからドライバーの確保が難しく、特に都内は応募が少ない。人を集めるためにも、利用者を増やすためにも、ドライバーのマナーやサービスに力を入れる。
ミスターカーゴ合同会社(村上陽一代表、同渋谷区)では、ドライバー意識を高め、サービスの質を上げるために、車建てから件建てで契約している。件建てにしたことでドライバーに対し、運賃の透明性も確保。ネットスーパーのスタッフとして、ホスピタリティに取り組めるようになった。効率化の面ではドミナンス配送を採用し、単一店舗にドライバーが行くという形から、数店舗を受け持つことで効率化を図る。「ネットスーパーはまだまだ伸びると思うが、配達の仕方に改革が必要」と考えている。
吉祥寺総合物流(同武蔵野市)の二瓶直樹社長は、「事業形態は違うが、食品を扱っている生協の置き配を採り入れることができれば、再配達の負荷が少なくなるのでは」と、ネットスーパーの効率化について考える。また、運送事業者側からの意見として「スーパー側のピッキングのスピードアップと、在庫切れによる時間ロスの改善が必要」とし、「ネットスーパーの配送を希望する人を増やすためにも、ドライバーが稼げるような効率の良い労働環境を作らなければならない」とした。
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