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労災を防ごう 人手不足で教育受けないまま作業
2017年8月18日
昭和47年に2万6068人だった死傷者数が平成28年には1万3977人になるなど、順調に減少している労働災害件数だが、ここ数年は横ばい傾向になっている。交通事故や荷役事故による死者数は減少しているものの、死傷者数は荷役によるものが期待ほど減少しておらず、横ばいの原因ともなっている。労働災害が多いとドライバーも安心して働けず、定着率も低くなる。今回は労働災害について関係者に話を聞いた。
運送業界の労働災害の現状について、陸上貨物運送事業労働災害防止協会(陸災防)の技術課では、「死傷災害の推移を見ると横ばいになっている。死者数は減少しているが、過去最低だった昨年に比べて今年は増加している」という。「交通事故による死者数は変わっていないが、墜落・転落による死者は昨年の6月末現在で1人だったものが今年は8人。死傷者数は同1670人だったものが1716人と、墜落・転落による災害がかなり増加している」と指摘する。横ばいを続けているとはいえ、死者数と死傷者数が減少した背景には「運送事業者各社の教育の成果が出てきたといえる。法的な行政処分の強化なども抑止力になっているようだ」という。陸災防では、平成25年から29年までの計画として「死亡災害を105人以下」「死傷者数を1万2400人以下」にする目標を掲げていた。「死亡者数については、昨年99人で達成したが、今年はこのままでは厳しいかもしれない。死傷者数もかなり減少させないと達成できないだろう」という。「死傷者数の7割が墜落・転落で、これを減少させなくてはいけない。現在、物流業界では人員不足で従業員が定着せず、慣れない作業員が教育を受けないまま作業しているケースも多いと聞く」と指摘。「また、ロールボックスパレットの事故が多く報告されており、全国で研修会を開いている。便利ゆえに使い方によっては危険で、事故につながりかねない。きちんとした教育を作業員に受けさせないとダメで、それにはトップがきちんとした考えを持たないと浸透しない」とも。
労災を防止するには、作業員へのきちんとした教育が必要で、教育をおろそかにする事業者への注意が必要だが、現場の声がなかなか行政に届かないという現実もある。行政ではさまざまな相談窓口を設置しているが、厚労省の「労災保険相談ダイヤル」では「相談件数は昨年度で2万7032件あったが、業種別で出していないので、件数が増加していることはわかるが、どの業種が増えているかまではわからない」(総務課)という。「相談では会社名を聞かないことになっているので、統計が取れない」とも説明する。
東京都労働相談情報センターでは、「年間9万件以上の相談があり、労災については昨年度で1812件。運輸業の相談はうち67件だったが、年によって波があるので評価が難しい」としている。現状では、現場からの相談で労災を防止することは難しい。行政とすれば、「問題が発生してから対応する」ことで減少させたい考えだが、労災事故防止には民間の保険会社やコンサル会社なども積極的に事業を展開している。
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