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ドライバーの健康守ろう 事故防止や経営リスク回避に
2017年8月25日
道路貨物運送業における定期健康診断の有所見率(平成27年度)は59・5%で、全産業と比べ5・9ポイント上回っており、その開きは、平成23年度以降微増している。ところが、健診のフォローアップの実施は限定的だ。道路貨物運送業に多い、産業医の選任義務のない事業規模50人未満の事業所では、各企業で健診結果を管理していかなければならないため、そのデータの扱い方を含めたサポート体制の構築が難しい状況がある。健康起因事故防止のためだけではなく、「労働力不足」「超高齢化社会」を背景にますます若年層の獲得が困難になっている現在、一人でも欠員が出れば、会社への打撃は大きい。こうした経営リスクを回避するためにも、各企業で健康面でのケアが見直されつつある。
サイショウ・エクスプレス(齋藤正雄社長、東京都江東区)は、齋藤敦士専務と健康サブリーダーの3人を中心に「健康経営」に取り組む。「健康経営」とは、事業主が従業員の健康づくりを積極的にサポートして、従業員が健康で元気に働く職場を作る経営のことで、これに取り組むことで、労災事故の防止、疾病手当の支払い減少や健康保険料負担の抑制につながるほか、内外的イメージアップ、業務効率を向上し、全体的な企業価値を高めていくことが期待されている。経産省の「健康経営優良法人認定制度」や、厚労省の「安全衛生優良企業公表制度」にチャレンジする基礎を作り、社会的な認知、企業イメージの向上にもつながる。健康経営を始めるにあたり、会社顧問として専門のコンサルタントをつけた。今年7月、2日に渡り「健康改善講習会」を実施。初回は、健康起因事故の危険性や、なぜ会社として取り組むのか、健康寿命や生活習慣病についての基礎知識などを学んだという。今後3か月に1回のペースで開催する予定だ。
また、同月から社内報「サイショウ健康・改善プロジェクト」をスタートさせた。第一弾は食事の写真を掲載。サラダやヨーグルト、トマトジュースなど、健康的な食生活に改善するため、取り組んでいる様子がわかるようにした。6月からは健康増進のため、ウォーキング活動も行っている。さらに、来年から全社禁煙にする予定。齋藤専務は「ドライバーの取り組みをその家族にも見てもらい、またドライバー自身にも気付きがあればいいと思っている」と話し、経産省の「健康経営優良企業(中小企業部門)」へのチャレンジにも意欲を見せる。
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? 「人手不足、超高齢化社会の中、募集しても集まらない。特に中小企業は1人、2人と欠けていくことのインパクトが大きい。補充も難しい。ベースアップしたって難しいのだから厳しい時代だ。健康経営に取り組むことは、荷主や求職者へのアピールポイントになる。他社との差異化だけでなく、最終的には業界のイメージアップにつなげていきたいと考えている」という。八千代運輸(吉本商一社長、同足立区)では、会社が管理しながらもドライバーの自主的な改善を促すという方針。吉本社長は「健診結果の確認など会社のすべきことは行っているが、基本はドライバーの自己管理。会社から促すだけでなく、外部に委託している講習も活用して、講師に健康管理について話してもらうようにしている」という。ドライバーが健診を受けやすい環境を作るため、自社倉庫に健診車を呼ぶことにした。「会社近くに住むドライバーが多いので、これまではト協支部などの実施会場に行く足がなかったり、行ってから並んで待つ時間があるので、受診を面倒がる者が多かった」(吉本社長)という。
一昨年には、あるドライバーがガンに罹患していることが判明した。当該ドライバーは「健診結果を見た社長から再検査するよう言われていたが、面倒くさくて後回しにしていた」と、話していたということもあった。「家から会社に来るのであれば、普段通勤しているのと変わらないので負担も少ないし、何より午前中で終わるのが大きい」と吉本社長。近隣の会社と協力して実施することで、費用も抑えられるという。ト協支部の勉強会で突然死に関する講演を聞き、日々の血圧測定で病気の有無がわかると知ってから、血圧測定も採用した。
「会社でできる取り組みはやる。それにコンプライアンスが重視される時代、健診結果の数値に対して、会社がどこまで対策を取ったかを示せる状態でいることは必要なこと。健診結果を個別に管理することで、次の行動が見えてくる」と話している。
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