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改正約款で混乱 荷主への周知・徹底不十分か
2017年11月3日
標準貨物自動車運送約款が改正となり、4日から施行された。「運賃」と「料金」の区別を明確化し、「待機時間料」を新たに規定するなど、トラック業界にとっては事業環境改善に大きく寄与する内容だが、荷主への周知・徹底が不十分なまま、現実の手続きに直面し、「どうしたら良いか分からない」と戸惑う事業者が続出している。「国の後押しがなければ改正約款は有名無実。何の役にも立たない」と指摘する声も出始めている。
改正約款は「運賃」以外の役務として「付帯業務」「積込み・取卸し」「荷待ち時間」などの対価を「料金」として明確化。荷主都合による荷待ち時間の対価は「待機時間料」として新たに規定。附帯業務として「棚入れ」「ラベル貼り」などを追加した。今夏、改正内容が明らかになった当初は、業界にとって「天佑神助」であり、運賃の適正化が大きく前進すると見られたが、ここにきて様相が一変している。改正約款に基づくルールを適用する場合、施行日である4日から「30日以内」に個々の事業者が「積込み料」「取卸し料」「待機時間料」などを具体的に設定し、運賃・料金表の変更届け出を行わなくてはならない。しかし、荷主との力関係から「例えば、待機時間料は1000円です、積込み料は2000円ですなど、とても言えない」というケースがほとんど。
また、「うちは孫請けのさらに下請けだから、直接、真荷主と話す機会はない。大元の方でやってもらわないと」という事業者もいる。さらに「込み込みで運賃を決めている。これを運送以外の役務と分けたら、現実に上げるわけにはいかないので、例えば100のうち運賃が80、その他が20となり、逆に運賃低下を招くことになる」と危惧する声も。
決定的なのは、改正約款が荷主に対し、何の効力も発揮しないことだ。「約款が改正されると聞いて『法律がしっかり守ってくれる』と勘違いしていた」と東京の中堅事業者。国交省が出した「改正に関するQ&A」によると「新しい約款に基づいて現行の運送契約の見直しを荷主に求めて拒否された場合、強制力や罰則等はあるのですか」の問いに「貨物自動車運送事業法では強制力や罰則等はありません」と素っ気ない。一方、トラック事業者が「運賃料金変更届または約款の認可申請のいずれも行っていない」場合、監査などで違反の対象となり、文書警告や車両停止処分を受ける。かなり不公平な内容なのだ。
旧約款をそのまま使用する場合は、施行日までに認可が必要。「うちは特殊な仕事で待ち時間もなく、旧約款のままで支障ない」とした茨城県のダンプ事業者などは認可を終えたが、「改正約款に移行できないため、旧約款で認可を受けた」事業者も多いと見られる。
「国がやってくれたことは、ありがたいが中途半端」と多くのトラック事業者が混乱する中、国交省自動車局貨物課では、「もともとトラック協会からの要望を受けての改正。根気強く荷主と交渉してほしい。既存の荷主(への適用)が困難でも、新規またはスポットで対応してほしい」と説明している。改正約款を、人手不足で危機的状況にある業界が、古い商慣習を見直す絶好の機会として生かすことができるか、今後の動向が注目される。
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