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物流ニュース
井ノ瀬運送 食品物流に特化「規模より中身が大事」
2010年10月20日
「40歳で保有台数40台、給料を40万円もらう」と心に決め、仕事に力を注いだ会社が、いまや車両は200台に達した。経営と社会環境の歯車がしっかりとかみ合い、おもしろいように仕事が増え、規模が拡大していったという。
しかし、台数を増やし、規模を拡大することが誇りだという考えは大きく変わった。3年前に大きな決断をした会社は、そこから生まれ変わった。「輸送に軸足を置き、食品物流に特化する」「コンプライアンスの徹底を図る」ことで、会社の体質は一変。「もう怖いものはない」という社長は、「会社にとって大切なのは規模ではなく、中身だ」と話す。
井ノ瀬運送(井ノ瀬喜一社長、埼玉県熊谷市)は昭和37年に、井ノ瀬社長の父親によって設立された。30歳で同社に入社したという同社長は、父親の下で現場を学んだ。
入社して5年後に同社長は一念発起する。「40歳になるまでに保有台数を40台にし、給料を40万円もらうと心に決めた」。当時は18台しか保有していなかった。
「がむしゃらに働いた」ところ、みるみるうちに車両が増えたという。「時代がよく、おもしろいように仕事が増えた」。40歳になったとき、トラックは50台を超えていた。
当初の目標を達成し、父親に代わり40歳で社長に就任すると、経営の手を緩めず積極的な営業を展開。物流センターを構築し、3PLの市場にも参入するなど規模は一気に拡大した。トラックは200台を、売り上げは35億円を超えた。
しかし、逆風が吹いた。競争激化による運賃下落や燃料価格高騰が重くのしかかってきたのだ。「それまで財務も何も関心がなく、やみくもに規模拡大を目指してやってきた」が、経営環境の変化に危機感を感じ、会社の見直しに着手する。
「すべてのウミを出す」と、事業の見直しに取り組んだ結果、3年前の決算で4億円という赤字を計上する。周囲ではよからぬ噂も立った。しかし、「会社を存続させていく中で避けては通れない」と、手綱を緩めることはなかった。
金融機関からの融資がストップし、会社の売却を打診する声もあった。しかし、「輸送を軸に、食品物流に特化すれば大丈夫」と、明確なビジョンを持っていた同社長は、こうした声に耳を貸さなかった。
逆境の中で体質改善に乗り出す。物流センター運営に注いでいた力を輸送に傾注。トラックの24時間活用という車両効率化に成功する。コンプライアンスの徹底も図り、ISOやGマーク、グリーン経営の認証も取得。
妥協を許さぬ姿勢で臨み、わずか1年で黒字化を達成した。その後も計画通りに進み、3年が経ったいま、「毎期5%以上の経常利益を確保し、明るい兆しが見えている」。
同社は大きな赤字を計上して以降、大幅な事業の見直しに取り組んだが、人員整理は行わなかった。「従業員を解雇して会社の数値改善を図るのは簡単だが、従業員だけでなく、その家族も裏切ることになる。私にはできなかった」という。
だからこそ、違う方法が必要だった。燃費向上や事故防止に対し、ドライバーに還元するとともに、中元や歳暮の時期にはドライバーの家族に荷主の会社の商品券を贈るなど、福利厚生の充実に努めている。
経営方針として「お客様第一主義」「現場第一主義」「安全第一主義」を掲げ、経営幹部には、荷主との強く長い結びつきや、24時間・365日営業の強みを理解させ、経営に参加させる仕組みを徹底。こうした取り組みの効果は、事故削減やコスト削減として、数字に顕著に表れた。
「3年前にウミを出したことが、結果的に会社を強くさせた」と振り返り、「会社に大切なのは規模ではなく中身だ」と指摘する。
◎関連リンク→ 株式会社井ノ瀬運送この記事へのコメント
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