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物流ニュース
退社した運転者が突然・・・拡大する「未払い賃金」問題
2011年3月30日
運送事業者はもちろん、荷主企業からの運送要請により事業が成り立っている。荷主が求める時間に集荷・集配を行うことになるため、労働時間も必然的に長くなる。他の一般企業に比べれば、労働時間の長さが顕著にならざるを得ない。最近、問題が大きくなっているのが、未払い賃金問題。弁護士をはじめ、労働組合や個人による労働基準監督署への告発事例が多くなっている。多発する未払い賃金の請求の中には、請求額数千万円という裁判も存在する。
大阪府堺市と和泉市に本社を構える運送会社で、立て続けに未払い賃金を求める事件が発生した。堺市に本社を構える運送事業者は食品輸送がメーンで、早朝や深夜の配送が多い。同社社長によれば、「2月上旬に弁護士から内容証明が届いた。7年間勤務したドライバーの、未払い賃金600万円を求めるもので、2年間さかのぼった形で請求されている。もし、これに応じられない場合、法廷での争いも辞さない内容だった。現在、役員会議を開いて対応を考えている」と話す。
一方、和泉市に本社を構える運送事業者では、雑貨輸送や長距離輸送を手がけている。同社社長は「他社と比較しても基本給は高く、手当も多数設けている。4tドライバーの給与は30万円程度で、他社と比べても高額と思っていた」という。「しかし、10年勤務し、4t車に乗務して近距離から長距離まで輸送していたドライバーが退職後に突然、内容証明を送り付けて来た」と驚く。
「未払い賃金を2年間さかのぼったものとして、約200万円を請求してきた。労務担当者が本人と話し合った結果、このドライバーは内容証明を取り消すとともに、今後は同様の行為を行わないようにするとの文書を提出。大きな問題にはならなかった」という。しかし、「今回、当社で初めて未払い賃金問題が発生した。賃金規定や就業規則などは完璧ではない。さらに、歩合給に残業費を含めていると思い込んでいた部分も多い。今後、残業費としてドライバーに理解させる内容が必要だと思い知らされた。専門家に依頼して、賃金規定や就業規則などを見直したい」と語った。
労務問題に詳しい中野労務・経営相談室の中野嘉之氏は「運送事業者の多くは、給与・歩合給・手当が設けられていれば問題がないと思うケースが多い。しかし、歩合と残業費はまったく別物。残業費はしっかりと明記する必要がある。ドライバーに残業費が支払われている事実を認識させ、賃金規定に明記することが大切」と説明する。
適正な形で残業費を支払うことが、未払い賃金問題を発生させない対策となる。この記事へのコメント
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