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物流ニュース
HOP 産学官連携 香港へサンプル輸送開始
2012年10月4日
北海道産品の輸出拡大や物流活性化を図ろうと、大学、行政、物流企業が全面的に連携して「輸送のプラットホーム」を構築する、全国初となる取り組みが進められている。
札幌大学と北海道開発局が主催する「国際物流を通じた道産品輸出促進研究会」は8月30日、会合を開き、「北海道国際輸送プラットホーム(Hokkaido export Platform、略称HOP)」を活用し、9月中に香港に向けた恒常的輸送事業(宅配輸送)とサンプル輸送を開始すると報告した。
HOPは、冷蔵・冷凍貨物の小口混載輸送サービスや、商取引・マーケティングなどの課題を解決し、道産品を直接的かつ安定的に輸出するための仕組み。組織ではなく、同研究会が進める事業名を指す。
「ダンボール1箱で道産食材を安価に輸出したい」といった生産者などのニーズに応えようと、産学官が連携して「輸出・通関から商社機能」までを持った物流と商流の新しい受け皿を創る取り組みだ。平成28年度をメドに完成を目指しており、物流事業者として現在、ヤマトグループが参画している。
宅配輸送は、HOP1と命名。1箱15kg、縦+横+高さ=120cmの荷物なら、道内のどこからでも香港の納品先まで、一律9000円(これに加えHOP1サービス使用手数料として販売価格の9%)で航空便を使用し、冷凍・冷蔵帯に対応して配送する。9月3日から受付を開始しており、同25日に第1便を発送する。
輸送だけではなく、通関にかかる手続き、書類作成代行、輸送時の保険、成分ラベルデータの作成(翻訳込み)、代金回収・督促までを提供する。このほか、海外メディアを活用した道産品の普及活動や現地ニーズ、購入者情報の提供、各種海外進出支援情報の提供も行う。
現段階では、購入者との契約交渉、外国為替取引、購入者が代金を支払わなかった場合のリスク負担、商品に対する苦情対応(輸送部分は除く)、梱包・成分ラベル貼付はサービスの対象外。
同研究会の事務局では「恒常的な国際小口冷凍・冷蔵宅配輸送の取り組みとしては、日本で最初のサービスとなる。ダンボール数個単位で荷物を出したい事業者や海外取引をこれから始めようという事業者にとっては非常にお得な内容」と説明している。
サンプル輸送は、9月下旬、10月上旬、10月下旬の3回で、道産食材のサンプルを香港の飲食店に届け食材の評価を調べる。5万円で50サンプルを輸送し、アンケートやヒアリングを通じて評価結果を聞く。注文があった場合は、海外取引につなげる。
8月29日現在で、8社(11品目)が応募しており、水、米、ホッキ貝などの食材からアイスクリーム、がごめ黒酢、松前漬手作りセットといったバラエティーに富んだ構成となっている。サンプル輸送は延べ30社の応募を想定している。
今月から宅配輸送とサンプル輸送を始めるHOPは今後、商社機能の追加、アジアに向けて輸送ルートの拡大、海上輸送の追加などを図っていき、最終的に企業としての独立を目指している。
同研究会の千葉博正札幌大学経営学部教授は「地域産品の輸出拡大を図るための全国初の画期的な取り組み。私たちの事業に賛同していただけるなら、ヤマト以外の物流事業者の参画も歓迎している」と話した。
【解説】
札幌大学と北海道開発局が昨年9月に「北海道経済の発展に資する国際物流活性化連携協定」を締結してから、約1年でHOPの事業が具体的に動きだした。
札幌大の千葉博正教授は「北海道の経済と物流を活性化させるためには、輸出・通関、輸送、マーケティングなどを三位一体で行い、物流と商社の両方の機能を持った機関が必要」というのが以前からの持論。
同様の問題意識を持っていた開発局が札幌大学と連携し、道産品の輸出拡大、国際物流の活性化、経済・産業の発展を目指す取り組みを進めることになった。物流事業者として参画しているヤマトも「北海道のために何か始めたいと考え、素晴らしい素材を海外に輸出するための専属の推進室をつくった」(小林秀朝ヤマト運輸北海道支社長)ことから、HOPへの参画が求められた。
北海道には、「商流ではマーケティング、パートナー探し、為替リスク、料金回収、検疫や関税といった問題があり、サプライヤー1社での取り組みは難しい。また、物流では、冷凍・冷蔵の小ロット貨物を輸送する所が不足し、これも物流事業者1社のみでの取り組みに限界がある」(千葉教授)といった課題があった。
この商流と物流の問題点を解決しようと産学官が呼応し、HOPの取り組みが進められている。残念ながら、地場の物流事業者からは今のところ、積極的な参加は見られない。この記事へのコメント
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