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ブログ・小山 雅敬
第235回:労働時間の削減で減収になるドライバーの賃金を補填する方法
2022年9月6日
【質問】2024年問題への対策として、ドライバーの労働時間削減を進めている途中ですが、労働時間の短縮により仕事量が減少することで、賃金が減額になるドライバーへの対処方法について悩んでいます。他社の対応事例等があれば教えてください。
ドライバーの賃金制度を検討する際には、コンプライアンスとマネジメントの両面を考慮して最適な方法を検討することが大事です。
例えば、労働時間の削減によって減収になるドライバーに対し、固定給を上げることで対処する会社がありますが、最近、そのような制度改定を実施した会社から「別の問題が発生して大変困っている」との相談を受けることが増えています。
会社としては、固定給の金額を上げれば減収額をカバーできるので、社員が納得するだろうと考えたのですが、固定給の増額は残業単価の増加につながり、労働時間による賃金格差をさらに拡大することになります。
のんびり作業をこなすドライバーほど高賃金になり、作業が早いドライバーほど低賃金になります。運送業は社内に異なる業務が混在し、ドライバーにも能力差があるため、労働時間短縮を全員一律に実施することは困難です。
納得を得るための制度改定が、逆に賃金への不信感を増幅させたとの相談を受けています。その会社は賃金制度を基に戻すこともできず、非常に困惑しています。労働時間短縮により減収になったドライバーの賃金を補填する方法は幾通りかありますが、業績給に対し、経過的に補填レートを適用する考え方を採り入れた運送会社の例があります。
本来は、荷主と交渉して、運賃単価の引き上げや適正料金の収受等を行うべきであり、運賃や料金の改善がなされれば、自ずと賃金の維持が可能になるはずです。理論的にはそうですが、現実は理想とは程遠く、運賃引き上げが簡単に進んでいない実態があります。
そこで、労働時間短縮による減収部分を補填するために、労使で話し合い、社員の同意を得て経過的な「減収補填レート」を適用することにし、その間も荷主との運賃交渉を継続して運賃単価の改善が達成された際には、経過措置を解除して従前の賃金水準を確保する方法です。
固定給は「時間給」であり、生産性とは無関係なため、労働時間短縮はそのまま賃金減額につながりますが、業績給は「実績給」のため、労働時間が短縮しても生産性を上げれば(例えば待機時間を削減して無駄な時間を省く等)、むしろ以前より賃金を増加させることが可能であり、全員で生産性向上に取り組む体制を作ることが出来ます。
(コヤマ経営代表 小山雅敬/中小企業診断士・日本物流学会会員)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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