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物流ニュース
特別対談 三原じゅん子氏×路線トラック連盟 南義弘会長
2013年2月21日
南 総選挙では自民党が大勝しましたね。運輸関係では改善すべきことが沢山あります。政権与党として、これからどんどんご指導していただき、業界を良くしていってほしいと思います。(この後、南氏から戦後の焼け野原の東京で会社を興した話、マッカーサーによる統治下の日本、朝鮮戦争と日本の政情など経験談が続き)今残された一番大きな問題は憲法問題ですね。
三原 そうですね。まず第96条からです。
南 どうぞ宜しくお願いします。トラック運送事業ですが、三原先生には運輸物流改革議員連盟を立ち上げていただいて、われわれが言う言葉としては不適切かと承知していますが、いわゆる「行き過ぎた経済的規制緩和」という問題に対して国交省のみならず厚労省なども巻き込んだ形で、包括的な内容で問題提起をいただいていることに感謝し、改めてお礼申し上げます。
三原 こちらこそありがとうございます。
南 先生がそうした問題提起をされている最中、昨年の4月29日、関越自動車道でツアーバスによる不幸な事故が発生しました。要因はまさしく、先生に取り上げていただいた状況の中で発生したと思います。
三原 ええ、その通りですね。
南 国交省では先生のご指摘を受けて「バスのあり方検討会」を立ち上げて、3月末に中間報告を取りまとめたばかりで、その直後の大事故でした。不心得者のために国交省が立ち往生してしまった。われわれトラック事業者については、あの大事故のずっと以前から「トラック産業の将来ビジョンに関する検討会」が国交省に設置され、当初から「安全と安心」の確立は最重要事項とされています。また、業界が抱える大きな課題としては、検討会で論議している「適正運賃収受」の問題、そして「最低車両台数」の問題があるかと思います。
三原 はい。
南 至近な例として、先生にご指摘いただいている「経済的規制の緩和」についてはカッコ書きにさせていただいて、あのような不幸な事故に対する正式な国交省としての判断は「社会的規制の更なる強化、監査・処分の強化」というものです。旅客自動車に限らず、われわれ貨物自動車も公共交通の安全確保という観点で、あらゆる社会規制の強化という方向で今、検討されているように思います。今後、これらに関しても先生のご指導、ご助言をお受けできればと考えております。
三原 昨年10月に出ましたよね、トラック産業の将来ビジョンに関する検討会のワーキンググループ(WG)の最終報告が。国交省から報告を受けましたが、最低車両台数も変えるということではなかったですね。
南 ツアーバス事故の発生以降、トラック、バスの社会的規制をより強化しようと、国はそのための調査、データ収集も行っているようですが、「経済的規制の緩和は今まで以上に進めていく」というのが国の基本的な考え方のようです。
三原 私たちが今度は先頭に立って、できることになるでしょうから。最低車両台数5台の問題でも、トラック業界では意見が割れているようですね。そこがやはり非常にデリケートな部分ですね。WGの報告では、業界の意見が一つになっていないところが浮き彫りになっていますよね。私たちは「普通に考えれば」ということでやってきたんですけど、「そうではない」という声がある。
南 やはりね、景気が良くならないと。何もかも実際は。
三原 ただ、私たちは「実運送」を担う方たちの運賃をしっかり守るということが、やはり政治の役割だと思います。路線事業者さんの運賃が業界全体に大きな影響を与えていると聞いていますが。
南 確かにそれはあるでしょう。ただ、かつては互いにライバルである部分だけ強調され、それこそ弱肉強食の時代があった。しかし今は、お互いに協力、協調し合わなければ生き残れない時代です。路線連盟は今、非常にうまくまとまっており、互いに協力体制を組んで、この苦境に立ち向かっています。いずれにせよ、どの業種でもそうでしょうが、日本経済全体の景気が良くならないと自ずと限界がある。
三原 逆に政治の役割を考えた時に、連盟さんとしては「ここだけは何とかしてほしい」というものがあれば伺いたいのですが。
南 「公共交通の安全」という大きなテーマの下、規模の大小にかかわらず、トラック運送事業者は総じて非常に苦労していることを、まずご理解いただきたい。東日本大震災でも多くの国民が再認識したように、「物流」は国民生活のライフラインであり、その物流の9割以上を担っているのがトラック運送であることは周知の通りです。「1民間の」ではなく「国民の」ための輸送を担っているのが営業ナンバートラックということを適確に認識していただいて、これからも政治の中で、諸施策に具体的に反映してほしいと思います。
■物流の重要性、もっと発信を
三原 そうですね。物流は「経済の血管」と言われますし、正にその通りだと思います。それが遮断された時どうなるかは、3・11で皆さんよく分かったと思います。ただ、物流の重要さはよく分かってもらえたと思うのですが、改めて、もっと「発信」していかなければならないという思いもあります。モノが「届く」「届かない」で、どれだけ経済や暮らしが損なわれるかというのは、どんどん発信していくべきと思うのですが…。そういう中で、実際に現場に携わる人たちが、どんなにご苦労されているかも国民に伝えていかなければならないと思うんですね。それが規制緩和によって、どれだけ間違った方向に行ってしまったかがはっきりしているなら、できるだけ早くストップしなければいけない。
南 先生が指摘されますように、経済的規制の緩和が日本経済にどれだけ経済効果を招いたかは、正しく評価する必要があると思います。経済的規制緩和をする中で、日本の経済を高めていった効果はあった。それで日本経済を大きく牽引してきたことは事実です。ただ、それが行き過ぎるということがあるとすれば、どこかでコントロールが必要になる。
三原 そうですね。行き過ぎということも、もちろん問題なのかも知れないのですけれど…。私が一番重要だと思うのは、やはりインフレの時にやることとデフレ時にやることって正反対じゃないですか。規制を緩和するのと規制を強化するのと。それが、あの時はもちろん規制緩和で良かったんです。今は、これだけデフレなんですから政策を変えないといけない。ですから、あの時代のあの経済状況では私は正しかったと思うのですけれど、「もうデフレから何としても脱却しよう」と言って、わが党が一番、1丁目1番地にしているわけで。そこで、かけていく規制というものの考え方はしっかり方向転換するべきだろうと、私は考えますね。
南 円高、デフレは怖いですよね。
三原 本当にそうなんですよ。
南 不良債権の整理が小泉内閣の頃にあって、これから良くなりかけてた矢先に、世界の通貨のドルが金融バブルで崩壊しちゃいましたからね。
三原 インフレも怖いけど、デフレのここからが抜け出せない…。
南 抜け出ださなきゃ、何も片付かないですよ。
三原 そうなんですよね。で、皆さんの収入が上がる方向というのは、モノが回ること…。物流なんて特に回す、経済を回すという意味で非常に重要な役割ですからね。
南 今、おっしゃられている、いわゆる規制緩和の、経済的規制と社会的規制があるとすれば、その社会的規制の強化は、公共交通の安全を確保していくために、業界として率先して進めていく。例えば国交省の指導の下、私どもの業界では「高速道路におけるパトロール事業」を展開しています。いわゆる業界の自助努力として。もちろん道路交通法は守っていかなければならない。国が定めた事業法も守っていかなければならない。事業者の中にそれを逸脱している者がいるとすれば、それは自ら摘発してでも、国交省に「こういうようなスピード違反をしています」というような報告をさせていただくとともに、業界としても、それを大きな問題として取り上げて、業界として取り締まっていくということも、今日まで進めさせていただいております。
三原 それはとても重要なことですね。
南 今後も国交省の指導をいただく中で積極的に進めていきたいと思っております。ですから社会的規制の強化に、業界的には異論はなく、それはそれとして謙虚に受け止めまして、自らが自助努力として進めさせていただく。そう考えておりますので、逆に、「もっときちんとやりなさい」というように、先生方から業界にご指導いただく中で、より強力に進めながら、決められたことが守れない事業者はフィールドから「ちょっと出て頂戴ね」というようなことも必要なのではないかと。そのことが、4月29日のあの不幸な事故が物語っていると思うんです。旅客、バスだから関係ないよという気持ちではなく、同じ公共交通として、同じ認識でとらえて。そういう面でもご指導いただければ、非常にありがたいかなと思っています。
■「自助努力」が大切
三原 「自助努力」は大切なことですね。やはり各事業者さんがそれぞれコンプライアンスを確立することですかねえ…。色々な意味で今、「片目つぶってる」ところって多いじゃないですか。国交省もそうだと思うんですけれども、それによって淘汰されていって…。
南 いずれにせよ経済環境ですね。91年にバブル経済が崩壊して、策なしで20世紀が終わった。21世紀になって2001年、小泉内閣が不良債権処理に入って、それで6年間、まあ、2000兆円規模のバブル経済が崩壊したものだから。過去に世界に例がなかったもんだからね。政治は混乱、景気は低迷、社会は不安の中で過ごすような日本になっちゃって。それで少し良くなりかけたかと思ったら、サブプライムローン問題が07年に起こり、08年にリーマン・ショック。さらに11年には東日本大震災が起きて、不運続きで日本は良くならなかった。ずっと不況が続いている。22年間不況続きですよ。それで立ち直るために、円高にさせられたり色んなことをさせられながらここまできてしまった。
三原 やはりデフレから脱却するということですね。
南 デフレから脱却することもね、今の日本の経済もだいぶ円高になっちゃって。円高・デフレの中で日本では設備投資ができないから外国にどんどん設備投資をしていったわけですよ。工場も海外に流出していきました。
三原 日銀もインフレ目標2%の検討に入りましたからね。
南 本当にみんな自民党に期待してるんですよね、民主党が負けたからっていうのじゃなくて。安倍内閣には思い切ってやってほしい。
三原 物流業界に関しても、現在抱えている問題点と、将来的に業界全体がどういうビジョンを持っていかなきゃならないか。よく人材育成とか後継者の問題とか出てきますし、「将来像」というものを見据えて、しっかりとビジョンを描きながら、目の前の対策にも取り組んでいく。結局はその時の規制緩和という、当時の状況の結果として…。ただ、その後のビジョンが今ひとつ描けていなかったのかなと。そこを私たちは、今度はきっちり描いていかなければいけない。皆さんのご意見を参考にさせていただいて、ご指導いただきながら将来像を作っていきたいと思います。
南 新しいイノベーションを起こしてね、より良い方向への改革をお願いしたい。
三原 もちろん環境の話などもありますが、人と経済と環境と、すべてにおいて将来像というものを見据えていかなければならないですよね。
南 先生がおっしゃっている環境の問題についても、ご存知のようにトラックは燃料が不可欠で、CO2を排出するという業界ではありますけれども、いわゆる温暖化対策、低炭素化社会作りという面では業界として環境省、国交省のご指導をいただく中で、先進的に取り組ませていただいております。例えば電気自動車、CNGトラックの導入に見られる通りであります。また、平成25年度事業として環境省、経済産業省ならびに国交省との連携事業の一つとして、大型CNGトラックを運用した、中距離輸送の低炭素化モデル事業があります。我々、特積み運送業界としても、国交省指導の下、今後3年間の事業計画の中でも、積極的に検討させていただきたいと考えております。旅客自動車で、いわゆる乗合バスという業界がありますが、それと同じように、トラック運送業界の中でも、いわゆる拠点から拠点までの運行を担っている我々特積み運送業界では、低炭素化事業を強力に進めさせていただきたいと考えていますので、その面でも今度は表舞台で評価をいただいて、またご支援をいただければ非常にありがたいなと思います。
三原 そう考えると、路線連盟さんの役割ってすごく大きいですよね。
南 また、憲法問題についてもね、端々に発言されるようにお願いしますよ。
三原 はい。まず96条からやってかないといけないですからね。参議院選挙が終わったら、そうしたら人数が、ね。
■伝統、若手のパワーに期待
南 日本国憲法はね、外国が日本を統治するような憲法に今なっています。植民地憲法ですからね。
三原 そうですね、真の独立国を目指さないとなりません。
南 マッカーサーも「独立したら独立した憲法に直しなさい」と言っていたんです。昭和29年に鳩山一郎が総理大臣になって吉田が降りた。で、やろうかと思ったって、当時は共産党と社会党が強くてね、3分の2ないとできないものだから。とても話にならなかった。それから昭和30年になって、今度はオリンピックが決まって国連に加盟できるようになった。国連に加盟するために一生懸命あちこちに政治家も走り回ったけど、常任理事国のソ連(当時)が反対してね、ようやく翌年に加盟できた。だからね、一人前の独立国にしないとね、本当の意味でちっとも伸びない。第2次世界大戦後、アフリカの植民地もアジアの植民地もみんな独立国になった。ただ日本だけが植民地憲法を使っているのです。
南 先生は今、自民党のトラック輸送振興議員連盟(細田博之会長)にも所属されているんですよね。運革議連とは別に。
三原 事務局次長になりました、細田さんの方の。
南 トラック議連は伝統があり、運革議連の方は若手の議員さんのパワーがあるので、大いに期待しています。ぜひよろしくお願い致します。
三原 こちらこそよろしくお願いします。
南 国の大きな問題として憲法改正を発言されるお立場になってもらったら良い。今の若い人たちは憲法を知らないですから。今、参議院が非常に重視されている。参議院は先生にかかっているかと思います。これができれば憲法も改正、ということにつながるかと思います。ただ、民主党を敵に回すわけにもいかないしね、やはり上手に使っていかないとね。仲良くうまくやってもらわないと(笑)。
【三原じゅん子氏】自民党参議院議員。東京都生まれ。運輸物流改革議員連盟の事務局長。昨年、本格的に活動を再開したトラック輸送振興議員連盟では事務局次長に就任。元女優、元歌手、元カーレーサー。2010年の参議院議員選挙に比例区で出馬。「二足のわらじを履けるほど国会議員の仕事を甘く見てはいない」との言葉通り、当選後は女優の仕事は一切していない。自身の経験からがんの予防、がん患者への福祉、不妊治療対策に力を注いできた。トラック運送については「中小事業者が抱える問題の解決なしに日本のライフラインは守れない」と主張、活動を続けている。
【南義弘氏】一般社団法人日本路線トラック連盟会長。1923年(大正12年)生まれ。本籍・兵庫県。千葉工業大学冶金科卒。1975年から2005年まで30年間、トナミ運輸の社長、同年6月から2011年までトナミホールディングス会長を務める。衆議院議長を務めた綿貫民輔氏は従兄弟。俳優の山口崇氏は甥。戦後の日本を支えた企業家の1人として、2011年には戦後の政治家のうらおもてを語りながら日本国憲法の意味を問う著作「限りなき道を わが戦後史と日本国憲法」を出版した。この記事へのコメント
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