-
物流ニュース
タイヤ脱落を防ごう「一番はタイヤを見ること」 変な安心感こそ警戒
2024年2月26日
「通行人が撮ったスマホ映像が拡散し、実数以上の事故が起きている印象がある」「走れば締まる方向に力が掛かっていたネジ(JIS方式)を、左右とも右に回して締め付けるタイプ(ISO方式)に変えたのが間違い」「車両の性能が向上し、道路環境もよくなったことで変な安心感がある」――大型車両の左側後軸の車輪脱落事故がクローズアップされ、当事者でもあるトラック運送の関係者からさまざまな声が届く。その多くは「左側走行の日本に合わないISO方式」と事故との因果関係。その一方で、自分の命と、場合によっては他人まで傷つけかねないタイヤ周辺のチェックを怠るドライバーが少なくないことを憂慮する専門家も目立つ。
過度に締め付けたホイール・ボルトの金属疲労による「折損」が車輪脱落の原因とされたのがJIS時代で、ISO時代はナットの緩みが同事故につながっていると指摘される。その方式変更から13年余り。ただ、整備工場も経営するトラック事業者によれば「どちらにしても規定トルクでの締め付けを意識していればボルトの折損も、ナットの緩みも未然に防げる」と話す。
昨年末に岡山県内で開かれたトラック関係の会合で、一人の経営者が「外れやすい左側の後輪を(JIS方式に)変えれば済む話。技術的に難しいものではない」と訴えると、堰を切ったように同様の意見が続いた。一方、嵩物や重量物を運ぶ香川県の社長は「通り掛かった一般人がスマホで車輪脱落の様子を撮影し、その映像が一気に広まっても締め付けの問題に触れられることはない」と指摘。
昨年度に全国で発生した大型車の車輪脱落は140件で過去最多を更新したが、その94%が左側の後輪が外れる事故だった。「何かあったときの責任の所在をはっきりさせておきたい」と話す兵庫県のトラック事業者はこのほど、それまで取引していたタイヤ業者を切り替えた。理由は「こちらが求めるデータ管理に応じてくれなかった」というもの。
大型車の車輪脱落事故を対象にした調査・分析検討会(事務局=国交省)の調査結果を踏まえた令和5年度の緊急対策で、自社で大型車のタイヤを脱着するときは「脱着後の確実な増し締め」「日常点検での『ホイール・ナットの緩み・脱落』『ホイール・ボルト付近のさび汁痕跡、折損などの異状』」が確実に点検されているか記録し、チェックする作業が整備管理者の役割として追加された。
前出の兵庫の社長によれば「タイヤ脱着から走行100kmを目安に増し締めが求められるが、この辺りからだと大阪の往復でも100kmを超える。以前から1運行が終わった段階で増し締めのために契約タイヤ業者へ行かせてきたが、作業記録を取ることを嫌がったので切り替えた」と説明。ただ、社長によれば「増し締めは、その際の1回だけ」とのことで、日常点検に不安な印象も受けた。
一方、「時短で走れなくなったドライバーが収入を確保するために4トンから大型、大型からトレーラに移る例や、素人のようなドライバーも増えた」と、保有する全車が大型という岡山県の運送経営者は「確かにネジを回す方向の問題もあるが、一番はタイヤを見ること」と断じる。自分がドライバーだったころと比較しながら「SAに立ち寄れば、トイレに行く前にぐるっと一周してタイヤをチェックしたもの。いまは駐車してトイレや売店に行き、戻って仮眠か、すぐに出発」とドライバーの行動が信じられない様子。
「ネジが1本外れてもタイヤはすぐに脱落しないが、それをチェックしないから事故が起きてしまう」。ドライバーになりたての当時、「タイヤの周辺でキュッキュッと変な音がする…と職場の先輩に話すと『そりゃあネジが緩んどる』と教わった。その通りだった」と述懐する。
同社では「みんな当たり前にやっている」とタイヤ確認は日常の光景。「過積載が当たり前だった昔と違い、いまは定量積載で安心感がある。それに車両もタイヤもよくなりすぎて変に信頼してしまっているし、オイル量の確認もままならない素人ドライバーも増えた。部品の問題もあるが、基本の浸透が先決だ」と指摘する。
この記事へのコメント
関連記事
-
-
-
-
「物流ニュース」の 月別記事一覧
-
「物流ニュース」の新着記事
-
物流メルマガ
「JIS方式に変えれば済む話」。その通りだと思うんだけど、国交省はなぜやらないの?
「過度に締め付けたホイール・ボルトの金属疲労による折損が車輪脱落の原因とされたのがJIS時代」って書いてあるやん?
結局問題なのはタイヤが脱落することで、単にホイールボルトが緩むか締まるかではないし、方式がどうであれ「ネジが1本外れてもタイヤはすぐに脱落しないが、それをチェックしないから事故が起きてしまう」レベルの不適切な点検や整備が変わらない事には何も変わらないのよ。
ドライバーの行動が信じられない様子ってそりゃあんたがた経営者さんがろくに社員教育をしていない証拠でしょう?
自分等でド素人を採用しといてそりゃ無いよね。
ドライバー自身にも問題は多々あろうがその責任を負ってるのはこの記事の「専門家」や「経営者」でしょうに。
憂慮すべきはドライバーではなくあんたがたの経営能力や指導力の無さ。
たまに横乗りするけど、たしかにまったく足回り見ない新人いてビビる。