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物流ニュース
事故防止の「キーポイント」
2014年12月29日
デジタコやドラレコの導入が事故削減に効果を発揮した事業者がいるが、事故削減につながっていない事業者もいる。一方、そうした機器を全く導入せず無事故を続ける事業者、定期的な安全会議を実施し、日々、注意喚起を行っているにもかかわらず事故が減らないと悩む事業者も存在する。事故防止の特効薬はどこにあるのか。キーポイントを探った。
千葉県の事業者は毎月、安全会議を開く。管理者がヒヤリハット事例を話し、ドラレコ画像を見せるなどドライバーに注意を喚起している。しかし、事故は一向になくならないという。事故を起こしたドライバーには「社長自ら、事故が会社にとってどれだけデメリットなのか、どれだけ他のドライバーの迷惑になっているかなど切々と説く」という。しかし、その効果はしばらく続くものの、そのうち忘れてしまい、事故を繰り返す。何もしなくても事故を起こさないドライバーがいるのも事実だけに、「事故を頻繁に起こすドライバーを辞めさせるしか手はない」とこぼす。
一方、埼玉県八潮市のヤシバ運輸(吉田由雄社長)では、5、6年前までは「お世辞にも事故が少ないとは言えなかった」と、吉田信雄八潮営業所長が話すように、事故に頭を悩ませていた時期があったという。しかし今では、当時と比べ70〜80%の事故削減に成功している。その理由について「なぜ事故が起きてしまったのかということも含め、ドライバーと第三者の目線で話をしている」という。
ドライバーも事故を起こしたくて起こしているわけではないと指摘する同所長は、「上から叱りつけていては聞く耳も持たなくなってしまう」という。過去に叱りつけていた時は「ドライバーが事故を起こしたにもかかわらず、逆切れすることもあった」。その反省も踏まえ、同所長は徹底的に第三者として対応するように心がけた。ドライバーの言い分を聞くとともに、なぜ事故を起こしたのか、起きてしまったかを考えさせる。その上で、こうすれば事故が起きなかったのではないかという結論を、ドライバーと一緒になって導き出す。
事故は会社にとって確かに痛手だが、それを責めるだけでは解決しない。一方的に会社側が責めれば、伝わることも伝わらなくなり、むしろ逆効果になると学んだ。「ドライバーの言い分を、しっかり聞いてあげることが大切」と、同所長は話している。
埼玉県春日部市の石田運送(石田幸良社長)は、2年前にISO39001を取得し、事故削減を確実に達成している。今期は4〜10月までの累計で、構内での軽微な事故も含め4件で、昨年度と比較し事故率は64%減となった。同社では、事故に対して徹底的な要因分析を行っているという。「うっかりミスならば、なぜ、うっかりしてしまったのか。その原因が寝不足というなら、なぜ寝不足だったのかというように、原因を遡って探っていく」と鈴木教文取締役部長は話す。その結果、「事故の背景に家族の病気や健康状態などの不安を抱えていることが分かってきた」という。この結果を重視した石田社長は、「メンタルの問題をすくい上げる必要がある。コミュニケーションが不可欠」と指摘。管理者にも現場との積極的な対話を促した。
今では、ドライバーから心配事を聞けば、それも加味して配車を組むなどの配慮をしているという。積極的な対話を心がけたことで「四十肩で2、3日よく眠れず、運転が不安」と自ら報告してくるドライバーも出てきた。同社ではハード面としてISOの取得をはじめ、ドライブレコーダーの搭載、ヒヤリハット事例集の作成、顔写真入りの「安全宣言」の掲示などさまざまな取り組みを行っているが、そうしたハードも、「コミュニケーションが根底にあって初めて奏功する」と、同取締役は指摘している。
東京都江戸川区の柴又運輸(鈴木正博社長)では毎年、営業所または営業所内のグループ単位で課題を決め、半期ごとに、その進捗状況と結果を発表する。課題は、あくまで自分で決める。トップダウンの課題ではないため、自然と解決策を考え、役割分担し、協力し合うようになったという。同社は事故防止への取り組みに対し、ドライバーに自主性を持たせたことで自発的に、「事故を起こしてはいけない」という意識を芽生えさせ、それが事故の減少につながったという。
事故防止の手段として、ハード面の充実も必要ではある。しかし、事故削減に成功している事業者の取り組みを通じて見えてきたのは、ドライバーの意識改革などソフト面の充実に力を注いでいることだ。当たり前のようだが、運転するのは心あるドライバーであり、それだけに、ハード面以上にソフト面の取り組みが不可欠だといえよう。
◎関連リンク→ ISO39001 運輸安全マネジメント.comこの記事へのコメント
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