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物流ニュース
国交省 再配達削減策を検討、事業者・団体などが協力
2015年6月6日
宅配便の再配達削減を目指し、国交省は6月5日、「宅配の再配達に向けた受取方法の多様化の促進等に関する検討会」(矢野祐児座長、流通経済大学流通情報学部教授)を立ち上げた。会合には宅配事業者、業界団体、行政のほか、通販会社、コンビニエンスストア、総合商社、ロッカー会社などの関係者らが集結し、再配達の現状と課題を共有した。7月には同省の委託事業として宅配3社による消費者向けアンケートを実施し、原因分析を行うとともに有効策を講じていく。
EC市場は平成21年度から25年度までの5年間で約1.8倍の規模に成長。購入品目別に見ると、日用雑貨の比率が最も高く、全体の半数を占める。高齢化や買い物難民などの問題から、インターネットでの日用品購入はますます増えるというのが同省の見解だ。
一方、物流事業者では、宅配便取り扱い個数は過去5年間で13%増加しているにもかかわらず、対応できる十分な労働力を確保できていない。宅配便単価は24年度以降、労働力不足を背景に上昇傾向に転じ、25年度は前年度に比べ2.3%上昇している。運賃の上昇は電子商取引自体への影響が大きいとされている。また、都市部・都市郊外戸建て・地方別の再配達の割合を見ると、2回以上が約2割。時間指定の場合でも全体の2割が再配達になっている。
今後は再配達の発生による社会的損失(労働力不足、環境への影響など)を明らかにするとともに、消費者向けのアンケートを実施し、「再配達が発生した原因」「どのような受け取り方法であれば再配達を防ぐことができるのか」などの消費者意識を調査し、有効な方策を検討するほか、消費者意識と関係者の対策が合致しているか、関係者個々の取り組みの効率性も話し合う。
また、最小限のリソース投入で最大限の効果を発揮するための具体策として、「受け取り方法の多様化」「消費者への周知」「通販申し込み段階での対応」など関係者が連携して取り組むべき内容やその進め方についても検討し、共通のプラットフォームや大きな方向性の合意形成を目指す。
再配達の削減に通販会社も対策を講じている。同日行われた関係者によるヒアリングで、品川竜介委員(楽天・物流事業計画部部長)は、楽天で購入した商品の受け取り専用の「楽天ボックス」や、今年4月に実施した再配達なく受け取った利用者にポイント5倍のインセンティブを付与する取り組みを紹介した。
鹿妻明弘委員(アマゾンジャパン・SCM輸送統括事業本部事業本部長)は、エコポイントのシステム化やGPSを使った在宅率の把握や顧客の行動分析などビッグデータを活用した取り組みを説明。また「荷物の到着時間を見える化することで、顧客にとっての待ち時間の苦痛は軽減されるのではないか」といった提案もあった。
他の委員からは「通販事業者も受け取り専用ボックスは共用の可能性はないのか」(永峰好美委員、読売新聞東京本社編集委員)、「再配達になりやすい品目とそうでない品目をきちんと把握すべき。インセンティブも様々な方法が考えられる。ゲームアプリのようなもので他者と競わせるのも手」(澤谷由里子委員、早稲田大学研究戦略センター教授)という意見もあった。
矢野座長は、「競争によって各社のサービスが向上していることは事実だが、その一方で、サービスが重複し、無駄になっている部分もある。全体最適に向け、業界を超えたさまざまな利害関係者による共通のプラットフォームづくりが必要」と総括している。
消費者向けアンケートは7月中に1週間程度実施する予定。質問は、「1回目の配達時間の時間指定の有無」「自分で注文したものか、他者から送られてきたものか」「1回目で受け取れなかった理由」などの6項目。ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の3社の再配達の際に担当者がアンケート用紙を配布する。宅配ボックス利用者も対象とし、3000部程度配布する見込み。回答は返信用封筒での郵送またはWeb上の回答フォームのいずれかで可能。
7月17日の第2回会合では、アンケート結果を踏まえた再配達発生原因の分析と問題の把握、社会的損失の分析、対応策を検討する。第3回会合は8月をめどに開催し、共同の取り組みの内容や進め方の方向性を検討。報告書案を審議したい考えだ。
◎関連リンク→ 国土交通省この記事へのコメント
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