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ブログ・高橋 聡
第296回:令和時代の運送業経営 歩合設計編(93)
2025年9月14日
【歩合設計編】93
「頑張る運送業経営者を応援します!」というシリーズで「令和」時代の運送業経営者が進むべき方向性、知っておくべき人事労務関連の知識・情報をお伝えしています。
今号では前回に続き「歩合設計編」として時間外上限規制(2024年問題)への給与設計面での対応について解説してまいります。(その3)
1.歩合給の必要性
歩合給とは労働基準法の原則である「月」「日」「時間」ではなく「運賃収入(売上高)」「走行距離数」「コース」「立寄件数」「積荷・荷下回数」「製品個数」「重量」などの基準で積算される給与制度をいいます。多くの運送会社では事例のようなスポット運行、特車、フリー運行など変動的運行を行うことがあるのが実態です。当日の運行予定が変更になることも多く常に変化するため、歩合給的なインセンティブがあった方がマネジメントが容易になります。
以前から長距離運行は、そもそも宿泊を伴う運行が多く時間管理が困難であるために運行手当的な歩合給が主流であったという背景があります。さらには、売り上げから経費を差し引いた金額を給与とする、燃料代を節約すれば手取りが増えるという個人事業主・請負型給与も散見されていました。会社・ドライバー双方にとって合理的な仕組みであり「時間要素」を気にする必要性は低かったわけです。
そのようななかで運送業に限らず全業種において健康問題・過重労働対策により時間管理をする必要が生じ、運送業では24年問題として社会問題化してきました。現時点でも考え方が切り替わっていない経営者も散見されますが、すでに25年に入り36協定と連動した期間が1年経過し、いよいよ実質的な規制が実施されてくる状況にあります。
時間外規制、つまり残業時間数を削減する場合の対策を給与面から検討すると、歩合給は時間短縮のインセンティブになります。事例は典型的なドライバーを動かす手法です。ドライバー不足を背景にまだまだ親方的・個人事業主的な考えを持つドライバーを、いかにマネジメントするかという視点で考える必要があります。給与制度はドライバーをコントロールする仕組みでもあり、稼ぎたいという健全なモチベーションを持つドライバーを誘導する施策として有効です。
2.最低賃金法
歩合給÷総労働時間数で求めた単価は最低賃金の対象になります。最低賃金の上昇が見込まれるなか、変動的運行により一定の残業時間の発生が見込まれる運送業では、歩合給の設定は時間短縮と最低賃金対策の両面においても効果的です。関連記事
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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