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物流ニュース
スーパーマーケットのカスミ 運送事業者と共同で物流効率化へ
2016年6月7日
スーパーマーケットの大手、カスミ(藤田元宏社長、茨城県つくば市)は茨城を中心に関東圏に165店舗を展開。創業は1961年。現在、売上高は2502億5800万円(2015年2月期)を誇る。物流改善に積極的な同社は、JILS(日本ロジスティクスシステム協会)から物流合理化努力賞などを受賞。地元のトラック運送事業者と共同で取り組む効率化、合理化の現場を「見学」に来る物流関係者は後を絶たない。
「実は当社の物流は、自動化、システム化の面で遅れており、30年前のモデル。ただ『人』を中心にした物流モデルが今、大きく力を発揮している」と、ロジスティック本部物流部の齋藤雅之物流戦略担当マネジャー(写真右)は強調する。
カスミは「ソーシャルシフトの経営」を社是とし、チャレンジしている。地域の顧客と同社の関係性こそ「企業価値」とする考え方だ。そこには店舗や物流センターで働く従業員や作業員、ドライバーも含まれる。地域の特色を前面に打ち出した「個店経営」がソーシャルシフトの重要なキーワードになる中、「地域の特性が広がれば広がるほど、商品のアイテム数が増え、スケールメリットが利用できない物流が出てきた。遠方出店の加速、アイテム当たりの店舗ヒット率低下など、物流にとって非効率な条件が増加した」。
この対策に向け、2004年、改善活動をスタート。協力するトラック事業者のドライバーも含め物流現場で働く人たちが担当する「現場」の作業改善を目指して提案、実行し成果を上げていった。定期開催される「現場報告会」には藤田社長も出席し、成果報告を受けるため、現場の声がスムーズにトップマネジメントに伝わるのが特長だ。
店舗スタッフとドライバーが連携し、メーカー容器の回収作業で「4トン車で1時間以上、場合によっては2時間以上の無駄な容器整理のドライバー負担」があったのを「積み方」を工夫し、改善前に比べ半分にした。「これが運送事業者とカスミのWINーWINの仕組みのスタートだった」と齋藤氏。
同社が得意とするTC型物流センターのメリットを生かしたSCM展開は、三共貨物自動車(小倉重則社長、筑西市)と共同配送ネットワークを構築したのがきっかけ。調達物流を利用した納品代行を行い、センター仮置きの無駄を削減したほか、1車両を2人のドライバーが交代運転することでローコスト化と同時に曜日変更などの緊急発注にも柔軟に対応できるようになった。一部時間帯に集中するハム・ソーセージなど加工肉食品の店舗納品時間をずらすことで、物量の平準化も実現。センタースペースの創出と同時に作業効率化を目指す改善も行った。
メーカーのセンター入荷を12時間後倒しする運用のため、18社のメーカーに打診すると12社が「対応できない」との回答。これも三共貨物自動車と連携し、TC型SCMで解決した。「特に入荷作業では改善前に比べ最大50%、平均33%作業時間が削減できた」という。
「物流現場に素晴らしい解決策を持つ逸材が隠れている。それを掘り出すのが私の役目。改善では常にすべての関係者とWIN―WINの関係を目指す」という齋藤氏だが、「物流の改善が企業にとっていかに大事か」について社内でも共通認識を持ち続けねばならない。これを支援するのが上司の市毛由之物流部マネジャー(同左)。30年以上営業畑を歩いてきた市毛氏は「物流はまだ初心者」としながら、齋藤氏が仕事をしやすいように社内でコンセンサスを得たり、理解を求める役割を担う。藤田社長が物流本部長を経験していることも、同社が物流に深い理解を示す理由かも知れない。
◎関連リンク→ 株式会社カスミこの記事へのコメント
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