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物流ニュース
高速道、絶えない不正通行 ETC2.0で抑止なるか
2016年10月19日
「一般向けは個人情報の特定を防ぐため、起終点から約500mの位置情報を削除する…という趣旨の説明が協同組合から届いた書類に書かれていたが、削除するということは、裏を返せば情報をすべて把握しているということ。業務用は削除しないとも記されていた」と岡山県のトラック運送経営者。ETC2.0車載器に関連した憶測が飛び交っているが、新しいシステムで収集された車両情報が、どう利用されるかが見えないことも背景にある。広島県にある中国道のサービスエリアで休んでいた大型トラックの男性運転者(山口ナンバー)は「トレーラやバイクの悪質な行為がなくなるのではないか」と話した。
GPS付きのETC2.0車載器を搭載することで特車ゴールド制度や、この先に予定されている車両運行管理支援サービスなどが受けられるが、そのためには車両の位置情報を確実に把握する必要がある。冒頭の社長が受け取った書類に記されていたように、一般向けは個人情報の観点で「起終点から約500mの位置情報を削除」するというものの、業務用はエンジンをかけた時点から切るまで、どこに対象車両があるかがわかることになる。指示した運行計画通りに業務が進まないケースも多いトラック事業では、この点を懸念する声もある。
■中国環状線
一方、山口ナンバーの大型ドライバーが口にした悪質な行為は「ドライバー仲間のやり取りで知った」という。その一つであるバイクによるものは、いわば〝中国環状線〟のような格好で、同エリアを最低料金でグルッと一周するという信じられないツーリング。手口は至って単純だが、故意にやっているとなれば不正通行であるのは明らかだ。
「例えば、中国道の宝塚IC(兵庫県)から下り方向の本線に合流し、往路は山陽道を走行。山口JCT(山口県)を経由して復路は中国道を走り、宝塚ICの一つ手前となる西宮北IC(兵庫県)で降りる。岡山道や広島道を使っても同じことができるみたいだ」とドライバー。この場合、走った本人が出口の料金所で実際の走行経路を申し出ない限り、高速料金は1区間だけの最低金額になってしまうという。
わずか1区間を何時間もかけて走るというのは異常でしかないが、高速道路に以前のような検札所がなくなった影響もありそうだ。ただ、いわゆるNシステムに加え、走行の軌跡を把握するETC2.0によって不正行為が抑止される可能性はある。道路会社では「そうした大きな周回走行について(実際の経路の)申し出がなく、ヘンな走行をしているということで取り締まった例もある」(ネクスコ西日本・広報)と話している。
■リフトアクスル
もう一つの悪質行為は、いわゆるリフトアクスル・トレーラを使ったもの。積み荷の重量に応じてトレーラの車軸を跳ね上げることができ、荷量が少ないときに特大料金を大型車の区分に引き下げることで経費削減が可能となる仕組み。これ自体は何の問題もない話だが、「いつも料金所の手前で停車するトレーラを不思議に思った係員によって不正が見つかり、ウチ(加入する高速組合)に警告文書が届いた」(異業種組合の関係者)という例もあるように、規定の重量を超えているにもかかわらず、車軸を跳ね上げて料金を浮かすドライバーがいるという。
仮に、最大積載量に近い荷物を積んでいる状態で2軸を跳ね上げ、本来が3軸のトレーラの車軸を1軸に変化させた場合、軸重違反となるのは明らかだ。また、「うちは空車でも跳ね上げを禁止した」と、かつてアクスルトレーラを使っていたという事業者は「確かに高速代は安くなるが、シャシーの傷みを考えれば意味はない」と話す。高速道路の利用をドライバーの判断に任せ、使わなかった分をドライバーの収入として還元する仕組みが「そうした不正行為に走らせる」という。
ネクスコ西日本では、「けん引車と被けん引車の組み合わせ(車軸数)で料金区分が変わるのは事実だが、どういう仕組み(で判別している)かについて答えることはできない」(同)と説明。ただ、こちらの不正行為もETC2.0などの新技術に加え、コーポレートカード利用のペナルティー強化が大きな抑止力となりそうだ。この記事へのコメント
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ループ旅はETCへの電源ラインにスイッチ付けといて
ゲート潜った時点で電源カットしちゃえばどうにでもなりそうな気が…
「アクスルトレーラ」では無いです、「リフトアクスルトレーラ」です。また、誤解が有る様ですが、リフトのするしないはリフトする際に乗務員が手動でどうのこうのするものでは無く、リフトバルブなりEBSなりが自動で制御して行うもので、乗務員ができるのは強制降下の切り替えだけです。今回の不正は、それらをいじってゲート通過の際にズルをしたものです。