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物流ニュース
日本気象協会 「天気予報で物流を変える」
2017年5月18日
日本気象協会(東京都豊島区)は、次世代物流システム構築事業として、「需要予測の精度向上・共有化による省エネ物流プロジェクト」を展開している。「天気予報で物流を変える取り組み」とは、どういうことなのか。防災ソリューション事業部プロジェクトリーダーの中野俊夫氏に話を聞いた。
同プロジェクトは、気象データを用いて食品ロスを減らすことを目的に、シミュレーションや実証実験などを2015年から3年度にわたり実施していたもの。参加企業はメーカーでは、Mizkan(ミツカン)、相模屋食料、キッコーマン、ネスレ日本、ポッカサッポロフード&ビバレッジ、伊藤園、卸・流通では国分グループ本社、川崎近海汽船、小売りではローソン、バローホールディングス、ココカラファインヘルスケアなど。
「『第4次産業革命元年』と位置付けられた2015年に、業種の壁を超えた取り組みとして始まった」と同氏は語る。「気象は唯一、将来を物理的に予測できるもの」とした上で、「全産業の約3分の1は気象リスクを背負っている」とその重要性を指摘する。
「気象によって、とりわけ影響を受けやすい」のが、食品の中でも「そうめんや鍋などに使われるつゆや豆腐」だという。「冷やし中華用のつゆは季節終盤の終売時に廃棄が多くなり、豆腐は見込み生産のため廃棄が多く、曜日や特売の影響を受けやすい」と同氏。つゆはミツカンに、豆腐は相模屋食料に、それぞれ協力を仰ぎ、解析ベースの検証や実証実験を重ねてきた。その結果、つゆは約20%弱、豆腐は約30%の食品ロス削減を達成している。
「日本の食品ロスは年間632万トンとも言われている。これはWFPが発表した世界の食料援助量の320万トンを2倍近く上回っている」と警鐘を鳴らす。「在庫を抱えたくない小売りに対し、食品メーカーは見込み生産で多めに商品を製造し、食品ロスにつながっているのが現状」という。
問題解決の糸口として、同氏は「気象予測」に期待を寄せる。「温暖化の進行で気象の変化が著しい一方、気象予測精度は30%ほど上がっている」とし、「AIやビッグデータを活用し、需要予測を高度化できる」と語る。同協会では、受注生産の枠組みを支援するコンサルティングも行っている。
同協会では、この「天気予報で物流を変える取り組み」のさらなる推進を目指し、今年2月に「eco×ロジ(エコロジ)」マークを制定。これは、同取り組みに賛同した企業・団体が、「商品需要予測の情報をもとに生産、配送、在庫管理などを行っている」企業であることの意思を表明するもの。同氏は、「社会貢献の証しとして活用してほしい」とし、「すでに数社から問い合わせをいただいている」という。
「製造・販売・配送といった異業種が連携するための潤滑油として、気象予測を利用してほしい」と語る中野氏。同協会は今後、食品のみならず、衣服や日用品、医療など、あらゆる分野への展開を目標にしている。「ロスを減らすことは、売り上げを増やすことにもつながる。運送事業者にとっても効率化が図れ、ひいては人手不足解消の足がかりになれば」と熱く語った。
◎関連リンク→ 日本気象協会この記事へのコメント
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