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インフラ整備が急務 劣悪な労働環境が続く物流現場
2017年10月20日
トラック輸送の取引環境やドライバーの労働時間を改善しようという機運が高まっているが、産学官が総がかりで取り組む様子からは、問題解決がいかに容易ではないかを感じさせる。定年でリタイアするドライバーが増える一方、若者に魅力をアピールできない現在のトラック事業では、人手不足が一段と深刻化しており、時短対策とは裏腹に現役ドライバーらの負担は増しているとの声もある。インフラが整わないなかで、難しい課題を突きつけられた格好になっているトラック運送の現場では、いまも相変わらず劣悪な労働環境が続いている。
コメの物流を手掛ける中国地方の運送会社。半世紀前に創業した男性オーナーは先日、荷造りや積み込みの作業料を別扱いでもらえないかと荷主に相談した。「労働時間を減らすには、これまでドライバーがサービスでやっていた作業を有料にしてもらい、その分を給料にプラスすることで賄おうと考えた」とのことで、荷主も現状を理解したのか「わずかながらも作業料を出してくれることになった」という。しかし、それから数週間たったころに「そんなのがあったのか…というような小さな運送会社のトラックが出入りするようになった」とオーナー。2台分の仕事だったが、それによって同社の売り上げは確実に目減りすることになった。「コメの袋は30??。それをドライバーが1袋ずつパレットまで手で運び、積み重ねながら荷造りした後に自らフォークリフトでトラックに載せる」。その作業の繰り返しで計400袋を大型トラックに積み込むのは2時間がかり。すべて自分でやる代わりに待ち時間はないらしいが、「たかが2時間といっても、休む間もなく12?分を手で運ぶ大変な作業をタダでやらせようという頭がオカシイ」と憤り、「これがトラック運送の普通の現場だということを行政に見てほしい」と訴える。
兵庫県たつの市にある山陽自動車道のSAで出会った大型トラック(岡山ナンバー)に乗る40代前半の男性ドライバーは「もうムチャクチャ」と現在の高速事情を口にした。「ドッグランや公園もいいが、それに広いスペースを取るためにSAの駐車場が減っている」と、休憩場所の確保さえままならないストレスが怒りへとエスカレートしている。
4時間の運転で休憩30分という規則や、拘束時間を縮めるために到着時間から逆算して出発を会社が指示するのが当たり前になっていることで「例えば、東京をめざして福岡や広島、大阪などを出発したトラックは休息地点も似てくる」という。かねて高速SAの駐車スペースが不足している問題が指摘されているが、「九州から東京をめざす?小隊?は中国エリアのトラックと合わさって?中隊?となり、それが大阪、名古屋辺りまで来ると?大隊?となって、似た地点のSAを目標にして走っている」と明かす。
そんな状態だから「入ったSAが満車なら、恐らく二つ先のSAまではダメ。斜めに書かれた正規の駐車枠に空きがなくなれば、並んだトラックの後部をふさぐようにマナー違反の縦列駐車が始まる。そうなると仮に正規の枠から1台が出て行っても、そこに滑り込むことは不可能。フラフラの体調で出て行くしかないドライバーも少なくないはず」という。現実とすれば怖すぎる話だが、ドライバーは「一般客を相手にするSAとは別に、PAをトイレと自販機だけの広い駐車場という具合に分けて整備してほしい」と話す。
労働力不足を背景に、手作業をともなう運送業務から撤退するトラック事業者が増えている。しかし、その一方で手積み・手下ろしを新規取引につなげるチャンスととらえて、従来のタダ働きをセールスしてくる事業者もいるという。高速道路の休憩スペースが足りない問題も深刻だ。飲食などテナント業者の経営も配慮しなければならない現実は、各地で閉鎖が相次ぐトラックステーションの現状を見れば明らか。「食堂で1000円も使えないから、もっぱら車内でコンビニ弁当」とドライバーは話したが、そんな高速ユーザーばかりではテナントが商売にならないのも確かだ。ただ、時短を図るうえで、今後も営業トラックの高速利用が増えるのは確実で、安全を最優先に考えたインフラの整備が急務になっている。
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