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ブログ・川﨑 依邦
一人でも入れる労働組合がやってきた(13)労働時間の把握力が弱い
2011年9月15日
中小運送業の経営は厳しい。売り上げから経費を引いて残るもの、いわゆる利益はどうか。利益はマイナス、赤字に直面している。根本的原因は荷主との力関係である。荷主に弱い。「運送屋の代わりはいくらでもいる」との荷主のプレッシャーに弱い。
中小運送業の経営者は、荷主に言いたいことがなかなか言えない。「この運賃では赤字なので、運賃を上げて下さい」とは言えない。言う時は断られる、あるいは撤退を腹に据えて臨むのがよくあるパターンだ。荷主との力関係は隷属状態で、「それでよく運送屋はつぶれないものだ」と言われる。
そこで中小運送業の経営者は、とことん経費を切り詰めるしかなくなる。間接経費はギリギリまで絞り込む。
間接経費とは、事務職の人員である。車両台数10台で事務職1人が間接人員の目安である。20台で2人、したがって、いわゆる「トッチャン・カアチャン」のパターンだ。家族経営でよく働く。それこそ休みもあまりなく、必死になってその日その日を生き抜いていく。
さらに、ドライバーの給料は手取り重視となる。手取りとは、給料総額から税金、社会保険料を控除した額のことである。
社会保険料の負担が大きいので、ドライバー全員が社会保険加入というわけにはいかない。「入りたくても入れない。このまま入ると、たちまち赤字が膨らむ」「社会保険料は払えないので滞納しているよ」「うちのドライバーは社会保険に入りたがらないんだよ」といった具合だ。
しかも労働時間の把握力が弱い。ドライバーの拘束時間は長く、1日13〜14時間、月間300時間以上の拘束時間は決して珍しくない。
待ち時間が長いケースもある。「これだけ待たされても待機時間は運賃がもらえない。荷主にその分請求したらどうですか」「荷主に仕事の進め方についてもっと効率的、合理的方法を提案したらどうですか」と思うが、中小運送業の経営者はじっと辛抱する。荷主に堂々と渡り合える経営者は少数派である。荷主との力関係が隷属状態であるからだ。
労働時間の把握力が弱いので残業代の未払い問題に直面している。そこへ「1人でも入れる労働組合」がやってきて、お手上げ状態となる。「このまま運送業を辞めてどこかへ逃げたいよ」と、弱気になる。
中には何があっても敢然とビクともせずに立ち向かう経営者もいるが、立ち向かう経営者は稀である。街宣車が来ようと、裁判に訴えられても「屁でもない」というタフな経営者は稀である。
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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