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ブログ・川﨑 依邦
一人でも入れる労働組合がやってきた(37)労働協約が足かせに
2012年3月15日
1人でも入れる労働組合と運送会社の歴史には不幸が横たわっている。「倒産」の歴史である。
A社長と1人でも入れる労働組合との団体交渉は難航する。A社長にしてみれば「ここで妥協すると会社が潰れる」という切羽詰まった思いがある。再雇用制度の導入に伴う評価制度は、こう着状態に入ってしまう。労働組合側は断固反対だからである。そこで労働組合側は提案する。「A社長の気持ちも分かりましたよ。再雇用制度に伴う評価制度は導入してもいいですよ。ただし分会員には適用しないで下さい。分会員が再雇用を望めば無条件で再雇用するということでどうですか」。
A社長は内心グッとくる。「争いを取るより妥協すべきか」。心が揺れる。上部団体のメンバーいわく「もちろん労働協約を締結しましょう」「A社長どうですか。労働協約を締結しましょう」。繰り返し説得してくる。「ここは大事なことですので、じっくり考えさせて下さい。次回の団体交渉までに回答します」。A社長の言である。
実はA社長はX社の倒産のことが頭をかすめていた。X社の2代目社長は敗戦の弁としてA社長に次のように語っていた。「労働組合との労働協約が、リストラや賃金カットの時に足かせになりました。何気なく労働協約というものは結ぶものだと思っていました。ところが労働協約の中に『組合員の給与、配置転換は労働組合と事前協議して労働組合の同意を得る』とありました。足かせになってリストラや賃金カットは思うように進まなかったです」。
中小企業の経営者は全財産、全人生を賭けている。会社の借金は連帯保証している。会社が倒産すると経営者も破産する。従って経営のことは経営者のワンマンである。ところが労働組合と労働協約を結ぶと、ワンマンでいられなくなる。平たく言って経営者が2人いるようなものとなる。経営者が思っていることを実行できなくなる。その代わり会社が倒産すると経営者も潰れる。このようなリスクを抱えている。
労働協約は重い。就業規則より上位にある。X社の「倒産」へと引き金を引いた「労働協約」。A社長は慎重にならざるを得ない。本音としては、経営を労働組合と一緒にやりたくはない。「労働協約を結ぶくらいなら、経営者を労働組合にやってもらいたい」。A社長の本音である。
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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