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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(181)ゆでガエルになるな〈事例A〉
2017年12月22日
〈後は沈むのみ〉
側近B氏もいない。A社長もいない。これでは頭のないのと一緒である。A社はばらばらになってしまった。しかし、日常の仕事は続く。結果、ピーク時と比べて売り上げが半分となってしまう。それでも会社が続いているのはなぜか。自然退職者の増加である。将来に不安を感じて社員が辞めていくのである。当然、売り上げが半分ともなると、資金繰りがつかなくなる。船に入ってくる水をバケツで外に放り出すようにして、人が減ってきた。追い付かない。お山の大将ばかりでも、肝心なことはA社長が決めないことには何も始まらない。
「肝心なこと」の一例としては、給与の抜本改革がある。年功序列の賃金体系から成果主義へ移行する抜本改革である。あるいは不採算営業所の廃止である。さらにはメイン荷主にばかりしがみつくのをやめて、脱メインを掲げて行動することである。今までの仕事の進め方を大きく変革して、チャレンジしていく方向性をとることである。超保守型から変化型へと大きくシフトしていくことである。
ところが、A社長はこの肝心なところについて決断しないのである。「まだいける。まだいける」と変化することを拒むのである。A社長は裸の王様である。しかも物流がキライときている。まさにタイタニック号の運命にはまっている。さらに社員にも危機感がない。
「何とかなるさ。ここのところ昇給ナシで辛抱しているし、そのうちいいこともあるさ。給料も上がらないのに必死にがんばることもないよ。気楽にやっていこう。とにかくなんとかなるさ」
ゆでガエルとは、ヌルマ湯に入っていると下のほうから徐々に熱くなってきて、ついにはゆでられてしまうカエルのことである。途中まではいい湯だなとノンビリつかっている。徐々に熱くなっても、以前の気持ちいいヌルマ湯が忘れられない。「早く出ろ、危ないぞ」といくら呼び掛けても湯につかっている。そして、しまいにはゆでられてしまう。これが初めから熱湯に入ると、カエルはびっくりして飛び上がって出る。熱湯とは変化のことである。過去の栄光、成功体験にしがみついていては、ゆでガエルとなる。熱湯という変化こそ必要なのだ。変化を呼び起こす力は経営者が握っている。
A社の末路はゆでガエルそのものである。ヌルマ湯にひたり続ける。いくら寒風が吹いてもじっとしているので、外の寒さを十分に感じることはできない。湯から出ると寒いと思って、じっとしている。寒さに立ち向かう決断力と勇気がない。〝A社のようなゆでガエルになるな〟というわけである。
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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