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ブログ・花房 陵
道具を大切にするということ
2007年8月26日
●人材が豊に育つ現場では
企業は人なり、と言われ続けていますが、企業ではいつも人材不足に悩んでいます。
ゴーイング コンサーン(悩み事が続くこと)というのが企業の別名だとは思わなくても
企業はヒトとモノに問題がいつもあるのです。
優れた人材が採用できるかどうか、というよりは優れた才能を発揮する会社や現場な
のか、という問いが重要だと思うのです。人は期待されたときに、能力を発揮する気分
になりますが、「牛馬のように労働すればよい」ということを感じた途端に、指示無く命
令なければ腕の上げ下ろしさえ止めることでしょう。
人は評価の方法を知るまでは借りてきた猫のようにおとなしくする作法を覚えますが、
評価につながらない役目は奉仕か無償のサービスか、昇進の駆け引きかと考えます。
どのような職場環境を作り上げるかの悩みは管理職に共通ですが、考えや施策を従
業員に正しく伝えるのもまた至難の業です。スローガンでも白々しい時もあれば、報
酬制度を作り上げても加点の塩梅が悪いと評判になります。
従業員をどれほど大切に思っているかを示すスローガンに、『顧客満足より従業員満足』
という切り札がありました。
お客様への奉仕を社是にするには、最前線の従業員の満足感が背景に無ければならない
という思想で、これは正しい思考です。従業員に滅私奉公を強要するのは無理があるし、
かといって顧客重視を取り下げるわけには行かないからです。
しかし、従業員への満足感をどのように量るかは、ヒトとモノの悩みにつながる重大な
問題です。給与処遇、権限委譲、企業の格や評判など、従業員の家族や妻まで考慮に
入れると、「満足」のゆくえは遥か彼方まで遠くなります。
それでも企業は「働くあなたを大切に思っている」という姿勢を失わずに、常に新鮮な
プロポーズを続けなければなりません。
●人を大事にしているのはどこで分かるか
昔の生保証券では、新人は新規口座のネタとしか見られていませんでした。私も証券会社
勤務の経験がありますから、どれほど企業理念に「誠実、信頼、社会貢献」をうたっていても
そのうらや現実では二枚舌であることを骨身に染みて知っています。
証拠になるような研修、教育、配置や人事の動かし方などを知る限り、最近になって生まれ
変わった企業体質を知ることはありません。
店もシステムもすべて使い捨て、収支が合わなければ切り捨ての早いこと、びっくりします。
従業員や人材を大切にしている証拠は、モノをていねいに大切に長く使おうとする思想に
変えていることが真理でしょう。
収支は大事だけれども一度会社の用になったモノをどれほど大事にしているかは、丹精と
いう言葉に表れます。盆栽の手入れに通じる精神は、日本企業なら分かるものです。
新しくなくても高価なものでなくても、手入れを怠らないという風土は日本独自のものでしょう。
マテハン、設備、自動機器、事務所の機材に至るまで、毎朝清掃を行い、定期点検を漏れなく
行うことが道具を長く使うことにつながります。
松下、ソニー、日銀では数十年も動き続ける古参の機材があちこちに見られます。びっくりする
ほどなのです。ケチなのでしょうか。使い倒すという根性なのでしょうか。
●人を見ると会社が分かる
現場を見るといっても眼で感じる前に案内の人がいます。話題の人材や会うのが楽しい人々が
働く職場があります。企業が人材を活用して重用するときには、道具も光り輝きます。
そのお礼に手入れが行き届くモノなのです。
優れた人材の働く職場には、古参の機材が輝きながら鎮座している、これが真実なのです。この記事へのコメント
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筆者紹介
花房 陵
イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント
コンサル経験22年、物流から見た営業や生産、経営までをテーマに 28業種200社以上を経験。業種特有の物流技術を応用して、物流 の進化を進めたい。情報化と国際、生産や営業を越えたハイブリッド 物流がこれからのテーマ。ITと物流が一体となる日まで続けます。 -
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