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射界
2019年1月28日号 射界
2019年2月4日
「天は人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず」と言ったのは福沢諭吉だが、この教えは今も深く人々の心に刻まれている。これに反するような諺が西アフリカにある。「指は並んでいても、親指だけが離れている」がそれである。人の上に立つ人間は生まれたときから違う…の意味である。
▲この諺と似て伝えられるのが「栴檀(せんだん)は双葉よりかんばし」ではなかろうか。その人に備わった運命や才能は生まれながらのもので、どうすることもできない。部族の長になる者は最初から決まっており、周囲がどうこうできない…という西アフリカと共通する。確かに、親指は他の指と離れて、しかも少し太めで、指の中で大事な役割を担っている。
▲社会運動家として名を知られた片山潜(1933年没)は常日頃、「人間には運命というものがある」と主張していた。しかし、「ある程度は自ら開拓できる余地は十分ある。カネがあったら何々を実行するとか言って、ヒマとカネに責任を負わせる者が多い」と非難し、「実際にヒマとカネを自分で調達して実行しようとする者は極めて少ない」とも嘆いた。
▲人間は事の成否を運命に託したがる。そうするほうが説明しやすいし、結論付けるのに好都合だ。もし人間の未来が運命によって決まっていたら、人生は味気ないものになる。運命を自ら開拓して挑戦が叶ったときの喜びは測り知れない。しかもそれが、次の挑戦の踏み台にもなる。作家芥川龍之介は「運命は偶然でなく必然」と、自分で開拓するものという。
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