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射界
2019年3月4日号 射界
2019年3月11日
何かにつけ創造性(オリジナリティ)が求められるこのご時世。個性を発揮せよと励まされる。無い知恵を絞ってアレコレ考えるが、なかなかいい知恵が浮ばない。やっと思いついた考えも、ひょっとして誰かが既に思い描いているのではと不安がよぎる。ムダのようだが、大事なアクションだ。
▲江戸後期に活躍した国学者の上田秋成が『雨月物語』を発表した時、世間は妬み半分に「あなたは学問に私見が入り過ぎる」とけなした。しかし秋成は動じず、自らのオリジナリティを主張して反発。「わたくしとは才能の別名なり」と一蹴した。独創性の在り様を自負して憚らない強さを誇示したエピソードは、今の世に通用するほどの強さと爽快さを漂わす。
▲一方で「謙譲の美徳」という奥床しさも求められるが、競争社会の様相を強める現世、先を譲っていては〝落ちこぼれ〟にもなりかねない。ある程度の自己主張がないと競争の坩堝に巻き込まれてしまう。頭に浮かんだアイデアをいち早く世に送り出して商品化する才覚も大切だ。一瞬の遅れが命取りにもなりかねない激しさで、時の流れは激しく渦巻いている。
▲オリジナリティとは、自分の頭で考えたことであるのは言うまでもないが、どこまで自分が考え、どこから他人の考えかの線引きは極めて難しい。創造性の価値を確立するには、ある程度の「知の共有」が必要。知のネットワークと言ってもよい。過去に誰が何を言ったかを知っていることが暗黙の教養の一部になっており、教養がないと独創性は生まれない。
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