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ブログ・野口 誠一
第148回:バブルに溺れた経営(5)
2007年12月14日
Fさんにとってリフォームの営業は昔とった杵柄、お手のものと言ってよかった。が、Fさんは一から出直すつもりで、もう一度勉強する覚悟を持ち、一所懸命努め、励んだ。
そこには、かつての営業のあり方が倒産に結びついたのではなかったか、という反省があったからである。
すでにFさんは、かつての一時的な成功はバブルの上げ潮に乗ったにすぎなかったことを認識していた。次に再起したときは、景気や経済環境に左右されない真の経営を目指そうと決意していた。
倒産、夜逃げ、生活苦と、三重苦を背負いながらも、Fさんが再起への意欲を失わなかったのは、根っからの商売好きということもあるが、一介のサラリーマンでは永遠に、迷惑をかけた債権者へ返済できる日がやってこないからである。
債権者のなかには知人、友人、親戚、職人や下請けなど、裏切ってはいけない人たちも含まれていたのである。
そんなFさんがただのサラリーマンであるわけがない。ただの営業マンであるわけがない。毎日が再起へ向けての修業である。
そして3年、ついにその日がやってきた。自信を深めたFさんは、かつての仲間二人を誘い、再びリフォーム事業を立ち上げた。
1年目の売り上げはわずか2500万円にすぎなかったが、2年目5500万円、3年目1億3000万円と、ほぼ倍々で伸びている。
いまのところ一般住宅やマンション、賃貸アパートのリフォームが中心だが、それだけにすべて現金取引である。
かつては手形取引が中心で資金繰りに苦しんだが、いまは気楽と言っていい。むろん無借金経営である。二度と借金はしない。無理なく堅実な経営を目指す。お客さまに喜ばれる仕事を続けていく。それがFさんのモットーである。 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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