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ブログ・野口 誠一
第150回:食い荒らされる会社
2007年12月28日
Eさんは創業以来、赤字知らずの無借金、しかも売り上げが年々億単位で伸びていくという絶好調経営を、足かけ8年間も続けた。
そして平成三年、あちこちに分散していた工場を1か所に統合して効率を上げるべく、故郷・福島県に1500坪の工場用地(1億円)を購入して新工場を建設、操業を開始した。
このときEさんの経営は資本金5500万円、年商5億円、社員40人の規模に達していた。この絶好調経営が1年半後、なぜ倒産しなければならなかったのか。以下はEさんの述懐である。
──私は経営というものを全くわかっていませんでした。人員が増え業容が拡大するにつれ、当然ながら組織を整えていかなければなりません。
私はメーンバンクから人材を派遣してもらい、総務部長のポストにつけました。彼には総務のほかに経理も担当してもらい、代表者印を渡して税理士ともども経理を任せました。
同様に製造部門は製造部長に、資材部門は資材部長に、福島の新工場は現地採用した工場長に任せ、私はもっぱら営業と技術部門に専念しました。
こうしてきっちりと体制を整えたのですから、あとは黙っていてもうまくいくはずでした。私は、組織はつくれば自然に動くものと思い込んでいたのです。
しかし、個人経営の会社にそれは当てはまりませんでした。トップの目が届かなくなると、その組織はたちまちたるんでしまいます。
私は、そのことにまったく気付きませんでした。「言ったらやるもの」「任せたらやるもの」と信じ込んでいたのです。
結局、この甘さが命取りになってしまいました。いわば、技術バカの落ちた落とし穴です──
こうしてEさんは、任せた人材に白アリのように会社を食い荒らされ、倒産へ追い込まれていく。 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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