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ブログ・野口 誠一
第183回:経営者に問われる先見力
2008年8月22日
会社は潰れるようにできている。それを潰さないように乗り切っていくのが経営手腕である。そこで問われるのが先見力だが、いかにすぐれた経営者といえども、明日のことをすべて見通すことなど不可能である。
それほど経営環境といい時代状況といい、さらには経営パラダイム(規範)すらも激変してやむことを知らない。
20年前、この国はバブルの絶頂期にあった。それが平成とともに徐々に崩壊し、失われた10年の長い苦しいトンネルを抜けたら、経営を取り巻く風景はまるで変わっていた。
終身雇用も年功序列も株式持ち合いもどこかへふっとび、M&A、TOB、MBOなどの横文字がとびかい、フリーターやニート、ワーキングプアのあふれる格差社会に変わっていた。
こうした激変を予見できた経営者など1人もいない。だから未曾有の倒産が数年にわたって続いたのである。
大企業とて例外ではない。リストラと合併によって、かろうじて生き残ったにすぎない。かつて11行もあった都銀が、いまや3グループに集約された姿はその典型であろう。
失われた10年は企業にとって淘汰と不祥事の時代だった。換言すれば、多くの経営者が先見力と対応力の欠如を露呈した時代でもあった。
連日のように、一流企業の経営者がテレビに無様な姿をさらしていたのではなかったか。おそらく後世の史家は、「それ以前には考えられなかったような不祥事、人命にかかわるような不祥事が相次ぎ、経営者の質が著しく劣化した時代」と書くに違いない。それだけ厳しい困難な10年だったということでもあろう。
次回から、そんな時代に翻弄された経営者の実例を通し、先見力と対応力について考えてみたい。 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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