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ブログ・野口 誠一
第258回:話し相手が自殺を防ぐ
2010年3月5日
八起会が発足した昭和53年は、石油ショックに見舞われたところへ「列島改造」バブルがはじけ、長引く不況のなかで倒産1万8000件、自殺者2万人突破と、世相も経済もどん底だった。ちなみに年表で「昭和53年」を見ると、次のような項目が並ぶ。
・3月の完全失業者141万人。過去20年間で最高。(4月)
・不二サッシの過去5年間にわたる粉飾決算(430億円)が発覚。(5月)
・佐世保重工業救済の大蔵省原案がまとまる。(6月)
・警視庁が「サラ金被害」の実態を公表。〜8月までの間に自殺130人、家出(夜逃げ)1502人。(10月)
ざっと以上のような状況のなかで、私も前年(52年)に倒産を余儀なくされ、22年間続けた玩具メーカーの経営に終止符を打った。ときに48歳、つぶしの効かない年齢に達していた。倒産の原因はすべて、私の放漫経営にあったと言っていい。
そして家も土地も工場も、何もかも失った私は、家内と3人の子どもとともに6畳2間のアパートへ引っ越した。そして、虚脱感と無力感と、「死んだほうがラクかな」という思いが去来するなかで53年を迎えた。
何をする気もすることもなく、無為の日々が流れていく。新聞を開けば「倒産」「自殺」「一家心中」などの記事が目について仕方ない。
そんなある日、新聞を読んでいたら、精神科医だったか心理学者だったかは忘れたが、「自殺は孤独だから、話し相手がいないから起きるのです」とコメントしてあった。
私はハタと膝を打った。話し相手があれば自殺を防げるというなら、倒産者が集まって語り合うような場や機会をつくればいいではないか。そのアイデアがひらめくや、私はすぐさま行動に移した。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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