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ブログ・野口 誠一
第316回:命を救ってくれた日課
2011年8月25日
倒産は経営上の破綻にすぎない。犯罪でもなければ、無限の責任を負わねばならないことでもない。法にのっとって、きっちりと整理することが可能である。
とはわかっていても、中小企業の経営者にとって倒産は、何もかも「ジ・エンド」に等しい。そのために単なる会社倒産が、離婚や一家離散などの家庭倒産、さらには自殺や一家心中などの人生倒産にも結びつきやすい。
私の場合は前述したように、家族愛に恵まれたおかげで家庭倒産、人生倒産は免れたが、それでも孤独地獄にはずいぶん悩まされた。家族が揃う夜はまだいいが、一人っきりの昼間がいけない。得体の知れない孤独感と寂寥感にさいなまれ、「熱いトタン屋根の上の猫」同様、身の置きどころがないのである。そんなときは、さすがに頭の片隅をスーッと死の影がよぎっていく。
このままでは危ない…と感じた私は、懸命に日課をさがした。そして見つけたのが、「新聞を隅から隅まで読む」ことである。この日課にはたっぷり1日を要した。が、日課は命を救ってくれる。少なくとも、その1日だけは生きることを要求するからである。
私は淡々と日課をこなしていった。が、どうにも目について仕方ないのが、「倒産」「自殺」「一家心中」などの記事だった。
私がそのような境遇だったから、目についたわけではない。当時はオイル・ショック後の不況で、中小企業がバタバタ潰れ、失業者が巷にあふれていたのである。「サラ金」や「窓際族」が流行語となり、ガルブレイスの「不確実性の時代」がベストセラーになるなど、世相もそれ相応に暗かった。
そして、毎日のように倒産、自殺の活字が紙面に躍った。私は自分のことを棚に上げ、「何も死ぬことないじゃないか」と呟いていたものである。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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