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ブログ・野口 誠一
第332回:事務所に相談者が殺到
2011年12月19日
案の定、事務所を開設し「倒産110番」を常設したとたん、フル回転が始まった。事務所には相談者が殺到し、さながら倒産駆け込み寺の様相を呈していく。倒産にまつわる悲劇、悲惨のなんと多いことか。私はそのことを今さらのように思い知らされた。
一方、その間にも「倒産110番」は鳴り止まない。その1本1本に悲痛な思い、切羽詰まった思いがこもっている。たかが電話線ではない。それは地獄から這い上がる「クモの糸」ともなり得る。が、そのクモの糸をつなぐにも資金が要る。やがてボランティアの限界が見えてきた。資金が底をつき、運営が困難になってきたのである。
「倒産110番」が倒産ではシャレにもならない。私はアルバイトをしたり、家族や会員の協力を得ながら、必死にクモの糸をつなぎ止めるべく、もがきにもがいた。が、それにもおのずと限界がある。こんなに毎日、助けを求めてくる人がいるのに、閉めなければならないのか…私は無念でならなかった。
いよいよダメか…追い詰められたその月末、今度は私の前にスルスルとクモの糸が下りてきた。講演の依頼である。私は驚いた。八起会は倒産者の会である。私はその会長である。その私に何を話せというのか。そのとき、私の脳裏にまたマキャベリの言葉がひょいと浮かんだ。
「天国へいくのに最も有効な方法は、地獄へ行く道を熟知することである」
私はその処女講演で倒産の実態と、八起会が過去7年にわたって蓄積してきた倒産防止策を必死に訴えた。そして講演料をいただいた。その浄財が切れる寸前だったクモの糸をつなぎ止めてくれたことは言うまでもない。電気代も電話代も払うことができた。窮すれば通ずるもの、捨てる神あれば拾う神もいたのである。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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