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ブログ・野口 誠一
第363回:流通革命の中で
2012年6月4日
以下はYさんの体験発表である。
──私は製麺会社を経営していました。「麺」というとラーメン、焼きそば、うどん、そばなど、メニュー化された製品を想像されると思いますが、私が製造・販売していたのはメニュー化前の原麺です。ひと口に麺といっても、小麦粉のタンパク値の違いや配合上の違いによって、うどん、そば、中華めんなどに分類されるが、消費者(ユーザー)の手元に届くまでの流通上の保存条件で冷凍めん、インスタントめん、乾めん、生・ゆでめんに分かれます。
そのなかで冷凍めん、インスタントめんは、資本力のある大手メーカー数社の寡占状態にあり、乾めんは地方にもまだ中小企業がかなりありますが、それとて大手メーカーへの集約が進みつつあります。
一方、生めん、ゆでめんのチルドめん市場は、豆腐や納豆などと同様、家業形態が多く、年商1000万円未満の零細から3億─4億円の中小まで、各県エリアに群雄割拠の状態です。ただ、かつてに比べれば道路事情が格段によくなり、広域流通が可能になったことから、冷凍めんやインスタントめん大手の参入が相次ぎ、私がこの業界に入った頃は全国に6000社ほどありましたが、いまは2000社にも満たないでしょう。
こうした現象は小売り業界に共通です。大手スーパーや大手資本の郊外型SC(ショッピングセンター)の地方進出で、かつては活況を呈した商店街が、いまやシャッター街となってしまいました。地元の消費を支えた肉屋、八百屋、魚屋は次々に廃業に追い込まれています。この流通革命というべきか、大手資本の地方簒奪には対抗する術がありません。私の倒産も、こうした消費形態の大変化のなかで起きました。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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