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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(297)人材育成について(10)事例(1)
2020年7月20日
・働く環境を変える
働く環境を変えるとは、会社を変えることではなく、職場の環境を変えることである。この変化で働く人の心が一新する。心の問題は大きい。人のやる気は心の姿勢に影響される。心の変化は環境の変化によってもたらされる。
Aさんは59歳で、定年間際の技術者である。職場風土の改善というコンサルティングテーマで取り組んでAさんと知り合った。私が知り合った頃のAさんは不平家であった。「会社に勤めて35年、全くつまらない人生でしたよ。定年まで残すところあと2年、人生がやり直せるものならやり直したい」。顔が合えばタラタラと不平の連続であった。
そのAさんが定年1年前にコロッと変わった。そのきっかけは、会社からAさんに若手の技術教育係として、定年後も体が続く限り働いてほしいと言われたことである。
「人生は前向きでないとね。体の続く限り頑張るよ。最近の若い者はじっくりと教え込めば、ものになるよ」。晴れ晴れとした明るい顔で決意を語ってくれた。この変化は定年で〝お役ごめん〟から〝若年教育係〟へと役割がはっきりしたことによってもたらされた。「ウソみたいに変わるな」と、つくづく悟らされたものだった。
定年が近付いたサラリーマンには、よくあるケースである。医学的には「定年前仮面うつ病」という。定年が近付いたサラリーマンが胃痛や頭痛、めまいなど体の不調を訴える。いくら調べても原因が分からない。自分の居場所が見つからなくなって、ストレスに悩むうちに、無意識に病気という仮面をかぶる。自分の居場所は、すでに家庭にはなく、唯一の仕事の場も定年ということで、なくなってしまう。「会社でバリバリ働いていても名刺がなくなれば、ただのおじさん。一方では、うつ状態であることを家族にも見せたくない。自分が受け入れられるとしたら、病人になるしかないという甘えが自然と色んな症状を起こす」と医学的には分析されている。
心の変化は奥が深い。環境をいい方向へ変えることで人は育つ。Aさんの例でも証明済みだ。不平家だったAさんを変えたものは働く環境である。それまでのAさんは「どうせあと2年で定年だ。これから家へ帰ってもすることないし、おもしろくない」と思い込んでクサクサしていた。その心に灯をともしたのが〝若手の教育係〟という新しい役割だ。 (つづく)
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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