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    経営再生物語(301)人材育成について(11)A社の事例(2)

    2020年8月24日

     
     
     

     この突然の申し出には、伏線があった。A社は急成長している。社長はモーレツ営業マンで日曜日もなく働きまくっている。営業会議は朝7時30分から週1回行い、営業行動チェックも厳しい。当然A君も社長にひきずられて忙しい。表面上は、完全週休二日制であるが、営業員には適用がない。したがってA君も朝早くから活動している。社長にしてみれば、A君は半人前である。生産性には貢献していない。修業中である。A君もそのつもりで入社してきている。このモーレツな行動の日々も、一人前になるには避けて通ることができない修業だ。

     

     社長は自らの忙しさをぬって、月に1回くらいは飲みにも連れていき、自宅にも呼んで食事をしたりして、それなりに気を配ってきた。しかし、A君は、忙しさが苦痛だった。それに社長のような営業力はとても無理だと思っていた。内心悩んでいた。きっかけがきた。それがタクシーの中でのことだ。

     社長はA君の退職申し出に対して、自宅に帰ってあれこれ考えにふけった。社長は内心思った。「ショックだなあ。自分には人を使う能力がないのかもしれない。自分が営業力に関してはプロと自任しているので、ついてこれなかったらいつでも辞めてしまえと思ってきたせいかもしれない」。社長は反省した。また、その一方で、A君のドライさにもショックを受けた。自分がこの道で独立してやっていくまでには、A君の比ではない努力をつんできた。どつかれたり怒られたりして一人前になるもんだ、と社長は思っている。「やむを得ない」と割り切って、次の日、B君と緊急ミーティングをもった。

     B君は入社4か月、以前もOA機器の営業マンをしてきた28歳の青年である。B君も社長には、しごかれていた。社長「君の今までの経験に決して自惚れるなよ。業界は甘くないぞ。ギブアップするならいつでも言ってこい」と言い聞かせていた。社長はB君に、A君の退職について説明した。社長「非常に残念であるが、やむを得ない。こうなったら2人でしっかりやっていこう。苦労をかけるが頼むぞ」と善後策を協議した。

     ところが次の日、B君も退職を申し込んできた。B君「社長、僕は甘いです。一から出直します。申し訳ありませんが辞めさせて下さい」……。

     A社の社長は、わずか1年あまりで、2人の営業員を失った。さすがに社長も色々考えこんだ。

              (つづく)

     
     
     
     
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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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