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  • ブログ・川﨑 依邦

    経営再生物語(222) 宿命的体質の転換〈事例A〉

    2018年11月19日

     
     
     

    〈25年で事故死10人〉

     

     A社(物流業50人)の宿命は、事故によって死者を出す体質である。この25年間で10人の死者を出している。どうしてこんなことになったのか。

     25年前の事故は、大型トラックの乗務員が高速道路上で新婚の夫婦を死亡させたものである。それ以来、25年間で10人の死亡事故、いずれも相手が死亡している。

     A社は、今までの事故に懲りて安全教育に取り組んでいる。運行についても無理は避けている。それでも事故は起きる。5年前には、一度に5人もの死者を出す大事故を起している。25年間で3件ではあるものの、一度に複数の死者を出す事故も起きているわけだ。

     A社長は悩む。「どうしてこんなことになるのであろうか」。A社長は格別信心深いわけではないが、つくづく宿命を感じる。のろわれているのか、とさえ思う。

     「わが社は神仏に捨てられるようなひどいことをやってきたのだろうか」

     ハタと思い当たることがある。それは、犠牲者に対する慰霊を、毎年行っていないことである。25年前の新婚夫婦の死亡事故は、当時の事故係が退職し、いないこともあって相手の名前すら分からない。これでは、神仏に捨てられるのではないか。これでは宿命は転換できない。

     しかも、A社は労働組合のたっての願いで、事故を起こした乗務員をクビにすることなく、配置転換だけで、引き続き雇用している。これは正しいことなのか。5年前に5人を一度に死亡させた乗務員についても、組合は「われわれは運送会社です。あすはわが身です」と雇用継続を懇願した。

     この5年間は裁判が続いた。一審の判決は懲役1年6か月、執行猶予3年。こんなバカなことはない、とばかりに検察が控訴する。二審では実刑1年。A社長は、宿命を断ち切りたいと決意する。組合の強い抵抗を押し切って、裁判が確定した段階で、この従業員をクビにした。

     組合との交渉を乗り切るための体力、気力の充実を図るため、毎朝30分のジョギングもした。

     「何を言っているのだ。5人も殺しておいて、引き続き雇用せよとは、それで世間が通ると思うのか。今まで5年間も雇用してきたではないか。これが限界である」(A社長)

     「あすはわが身です。何とかしてください」(労働組合の言)

     結局、会社としてはクビにするが、社長が個人として、再就職に努力する︱︱ということで決着した。

              以上

     
     
     
     

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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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