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  • ブログ・川﨑 依邦

    経営再生物語(229)鬼業仏心の経営〈事例A〉

    2019年1月21日

     
     
     

    〈トップの気迫〉

     

     A社(車両50台)は、この不況期、1年ごとに経営悪化の坂道を転げ落ちている。ついには、社会保険料の滞納という事態にまで追い詰められている。いつ、つぶれてもおかしくない経営状況が続いている。この現象の真因は、実は内部にある。トップと働く社員の心がバラバラになっている。不信が根付いている。どうして不信の嵐に巻き込まれることになったのか。それはトップの姿勢からだ。

     トップは文字通り、裸一貫からスタートした。初めのトラック1台すら借金で購入し、ゼロからというよりマイナスからのスタート。このプロセスで、トップは「自分より偉いものはない」と自己過信してしまった。トップは人の言うことに耳を傾けない超ワンマン社長となってしまった。極め付きは本社社屋の建設である。土地、建物を全額借金で手配した。バブルのころである。個人で購入して、それを会社に貸す形を取り、会社からの家賃収入で個人の借金を返済することとした。

     社内の世論はざわめく。「どうしてこんな無茶をするのか」。しかし、面と向かっては、だれも何も言わない。超ワンマン社長への応対はイエスのみ。ノーと言えば、すなわちクビ——だからだ。

     バブルが崩壊して、会社は家賃が負担となっている。「自己過信が招いた分不相応の行動」——としか言いようがない。

     分不相応といえば、このトップは何かにつけて派手なのである。交際費も、ぱっと使って「ええかっこ」してしまうたちである。さらにその上、公私混同がひどくなっている。自分の楽しみでゴルフに行っても、会社の経費で落とす。平日でも平気でゴルフ場通いをする。そのため、社内の管理がルーズになる。部下の働きぶりのチェックもおろそかになる。休日に出勤もしていないのに、さも出勤したかのように装って、休日出勤手当を不当に受け取る。

     これらは、すべてトップの管理能力の欠如が原因である。その上、大事な決断で、グズグズしたりコロコロ変わってしまう。

     自己過信、分不相応、公私の混同、管理能力の欠如、決断力の欠如——といったトップの姿勢で、社内不信の根が深くなっている。これが経営悪化の真因である。

     反省のきっかけはどこから来たか。トップは毎日、資金繰りに追われて、ヘトヘトになって家に帰る。ある日、妻いわく、「お父さん、どうしたの。元気ないね。意欲をもってスタートした事業でしょう。もう一度、原点に帰って下さい。トコトンやったらどうですか」。妻の励ましではっとするトップ。「そうか、原点とは何だろうか——」。

     トップは自らの姿勢を正すこととした。朝一番に出社して、自ら社内を掃除することを日課とした。

     トップは省みる。今までは、何と愚かであったことか。「オレの会社だ。煮て食おうが焼いて食おうが、オレの勝手だ」と居直り、このために従業員との間に不信のミゾが深くなっていった——。

     毎朝5時に起きて、ひたすら社内の掃除に打ち込む日々。トップは変わっていった。毎朝の掃除を、雨の日も風の日も続けて1年。トップは経営再建計画を発表して協力を呼びかけた。経営理念確立の呼びかけである。

     
     
     
     
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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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