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  • ブログ・野口 誠一

    第199回:自殺者との面談

    2008年12月12日

     
     
     

     電話の相手は九州で金属プレスの加工業を営むTさんである。
     「もしもし、本当のことを申し上げます。実は、私…間もなく死ぬんです。会社がダメになって、整理しようと思っていますが、全財産を投げ出しても債務に届きません。このままでは債権者に申しわけなく、保険金で精算しようと覚悟を決めました。誰にも迷惑をかけない方法はそれしかないんです」
     「ですが、いざ死ぬとなったら、前から心にかかっていたことを思い出したんです。会社が左前になる以前から、一度会長さんにお目にかかって、経営について教えを乞いたいと思っていました。経営のほうはもう必要ありませんが、せめて会長さんにお会いしてから死にたいのです。失礼な申しようですが、私に冥土のみやげをいただけませんでしょうか」


     とんでもない言い種である。が、私はその口調から「これは本当にやるな」と直感した。
     しかし、「あなたに会ってから死にたい」と言われて、「はい、喜んで」と応じられるはずもない。が、断ればそれだけ自殺を早める可能性もある。
     私はしぶしぶ承知したが、彼に自殺を思いとどまらせる手立てはまるでない。困った、大いに困った。時間はない。明日のことだ。そこで、困ったときの神頼みならぬ仏頼みの挙に出た。
     八起会は稲荷町にあり、稲荷町は寺町である。私は片っ端から寺へ飛び込んで、各寺の住職の知恵を求めた。
     しかし、私の期待は見事に裏切られた。4か所ばかりまわったが、どこも「それは大変ですね」「弱りましたな」「どうしたものでしょう」と、のらりくらりとした対応で、何の知恵も貸してくれない。
     なるほど、寺は命が終わってからくるところだったか…そう思いなおしてあきらめた。その夜の眠りは浅かった。そして死に神にとりつかれた男と対決する朝がやってきた。

     
     
     
     
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  • 筆者紹介

    野口 誠一

    八起会 会長
    株式会社ノグチプランニング 代表取締役

    昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
    昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
    しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
    翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
    弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
    再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
    昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
    平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。

    電話番号:03-3835-9510(倒産110番)
    HP:http://yaoki.html.xdomain.jp/

     
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