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ブログ・野口 誠一
第345回:恐怖からの解放
2012年3月19日
気が付いたら、私は地べたに叩き落とされていました。何が起こったのか、瞬間的にはわかりませんでしたが、ネクタイの結び目が解けていました。ところが、もう一度やり直そうと立ち上がりかけたら、足が動きません。腰が立ちません。そして次の瞬間、総毛立つような恐怖が襲ってきました。体が震え、歯がガチガチ鳴って止まりません。私は携帯の電源を入れ、家内に電話を入れました。その途端、「あんたあっ、死んじゃイヤッ」と、家内の絶叫が耳に飛び込んできました。
その夜ひと晩中、私は家内に泣かれ、口説かれ、叱られました。死ぬも生きるもいっしょ、会社も社長もいらない、みんな捨てて逃げましょう。でも一生逃げ続けるのはイヤ、弁護士に頼んで会社も個人も、みんな破産してしまいましょう、そう言われました。
私は一度死んだ人間です。しかし、これからは家内のために生きなければなりません。私の借金はおよそ23億円、その8割強は街金融です。彼らがどう出てくるか、怖くないわけがありません。しかし、歯が噛み合わなかったほどの「あの恐怖」に比べれば、何でもないはずです。私は破産を決意しました。そして、そのことを家内に約束しました。
翌日、さっそく知り合いの弁護士に相談したところ、破産手続きにもカネがかかり、500万円ほどかかると言われ、驚くと同時にハタと困りました。そんなカネなど、あろうはずがありません。が、会社ですから取引先からの入金日があります。私はその日を待って、すぐさま弁護士のところへ走りました。そして翌日から、ただちに会社整理に入りました。平成9年4月20日のことです。その翌朝、何気なく見上げた空の何と青々と美しかったことか。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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