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ブログ・野口 誠一
第370回:取引辞退が相次ぐ
2012年7月23日
私にとって、同一エリア内に同業大手が新工場を建設したことは、大ショックでした。案の定、最後に残ったコンビニ1社も、当社からその新工場へ発注を移しはじめました。なにしろ最新鋭の大型設備という触れ込みでしたから、やむを得ません。
さらにショックだったのは、そのコンビニから、なにかと衛生面の指摘を受け、常にその工場と比較されたことです。それは、暗に取引の中止を示唆するものでした。たびたび抜き打ちの工場視察がありました。そのつど、厳しい改善要求もありました。そして、衛生設備の不備を理由に取引中止を宣告されてしまいました。コンビニとの年間取引額は約5億円(売上構成比60%)でした。
私は売り上げを補填するために、死にもの狂いで営業に奔走しました。そして99円ショップとの契約にこぎつけました。価格的には非常に厳しいものがありましたが、背に腹はかえられません。この契約で売り上げ減を2億円ほど補填できましたが、従来の体制でも利益を出せなかった会社が、さらに単価を下げて損益が好転するはずもありません。苦しい経営が続きました。
やがて、業界内で当社に対する信用不安がささやかれはじめました。最後のコンビニ1社にも手を引かれて売り上げ半減、利の薄い99円ショップに手を出したと伝われば、風評が風評を呼んでも仕方ありません。
やがて風評被害が出はじめました。最初はやんわりとした問い合わせのようなものでしたが、やがて仕入れ先から取引辞退の申し入れが相次ぐようになりました。沈没する船からネズミが一斉に逃げ出すと言いますが、それが始まったのです。いかに鈍感な私でも、ようやく倒産の近づく足音が聞こえはじめました。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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