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運送会社
ご存知ですか?「協力雇用主」
2007年6月11日
人手不足に悩む物流業界。社会貢献と人材確保が同時にできる方法をご存じだろうか。「協力雇用主」として過去に罪を犯した人を受け入れる「雇用」だ。しかし、運送事業者の協力雇用主はまだまだ少ない。
昨年五月、改正監獄法「刑事施設および受刑者の処遇等に関する法律」が施行され、法務省と厚生労働省が連携して「刑務所出所者等総合的就労支援対策」を実施している。
ハローワークから在監者へ求人・雇用情報の提供などが可能となった。刑務所とハローワークをネットテレビ電話で結んで、企業説明会の実施や企業採用担当者がテレビ電話を通して面接することも試行的に実施されている。
しかし、こうした支援も刑務所出所者を採用する意向のある企業(協力雇用主)がいなければ機能しない。そうした協力雇用主を確保することは難しいのが実情だ。現在、全国で5636の事業者が協力雇用主として登録しているが、実際に雇用するのは346事業者。全体の6%ほどだ。
登録している事業者の業種を見ると、5636事業者のうち建設業が2996と、半数近くを占める。次いで製造業が835、サービス業が542。運送業は147事業者ほど。ちなみに東京都内の運送事業者の登録事業者数はゼロ。
都内の運送事業者に雇う意思があるかどうか尋ねたところ、「何かトラブルでもあって、取引先の信頼を失うのが怖い」との回答。今後も雇うつもりはないという。
協力雇用主として平成7年から受け入れを始め、今年で12年目を迎える都内の土建業者は、「もちろん最初は不安だった。しかし、受け入れた者が3か月、6か月と経つにつれてだんだんいい顔になっていく。少しずつ変わっていく姿を見るのがうれしい」と話す。金銭的な見返りなどは期待できないが、出会いや社会に貢献している充実感が協力雇用主としての一番の報酬とし、「今後も協力雇用主を続けていきたい」と語る。
「(協力雇用主は)難しい面があることは確かだが、理解に裏打ちされた雇用であれば、きっとうまくいくはず」。社長だけではなく、社員を含む仲間全員が理解したうえで受け入れることが続けていくうえで大切なことだという。
NPO全国更生保護就労支援会が身元を保証し、雇用主に業務上の損害を与えた場合には、100万円を上限として見舞金を支払う制度も昨年9月から始まった。現在は協力雇用主として、できる限り受け入れやすい体制を整えつつある。
刑務所を出所後に定職に就けるかどうかは「再犯」を大きく左右する。「刑務所出所者の再犯率は、無職者39.6%に対し有職者は7.3%」と話すのは、東京保護観察所の松橋進一観察官。「罪を犯した人が特別な人ではないということを、多くの人に知ってもらいたい。協力雇用主として、多くの企業に協力していただきたい」と話す。
人手不足に悩む物流業界。「協力雇用主」という方法も一つの解決の手段として、一考する余地はないだろうか。(藤田太嗣記者)
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