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    ドライバーを失う前に メンタルケアの重要性訴え

    2012年3月2日

     
     
     

     心療内科・精神科・復職デイケアなどを専門とする、さっぽろ駅前クリニック(札幌市中央区)の横山太範院長は「いまや精神疾患は適切な薬物療法やリハビリを通じて治るもの。事故や自殺が起きると、会社が潰れかねない賠償を請求される時代。おかしいと感じたら、早めに専門医や医療機関に相談してもらいたい。運送会社も従業員のメンタルヘルスについて考え直してもらいたい」と訴える。
     横山氏は昨年、札ト協の顧問行政書士・佐々木ひとみ氏と協力関係を結んだ。今後、道内の運送業界のメンタルヘルス向上に向けて働きかけを強めていきたい考えだ。「運送業界でメンタルヘルスに悩む人、それによる事故や自殺者を1件でも減らす協力をしたい。メンタルヘルスの重要性を普及・啓発していきたい」と話している。


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     中小・零細が多く、労働集約型産業の代表格といえる運送業界では、メンタルヘルスケアの取り組みが進んでいるとはいえない。労働条件が厳しい会社では、「そんなものに構っている余裕はない」というところが本音だろう。
     定期健康診断や産業医の活用を通して、身体の健康状態を維持・把握に努めることは運送会社・従業員双方にとっての義務だが、精神面の疾患については、会社側からは「扱いにくい」と捉えられ、従業員としても「恥ずかしい、クビになるのでは」といった恐れから、顕在化しにくく、かつ、「どのような措置をとればいいのか対応がわからない」といった風潮から、積極的にケアするケースは多くはなかった。精神的に落ち込んでいる従業員に対しては「しっかりしろ」「頑張れ」と激励するケースが一般的ではないだろうか。
     横山氏は「運送業界が起こした交通事故のうち、精神面の悩みやそれによる過労や不眠を起因とするケースが一定の割合であると考えている。中には事故として処理されたが、自殺に等しいものもあるのではないか」と指摘。「鬱やパニック障害をはじめとする精神疾患は『厄介な病』『不治の病』といったイメージがあるかもしれないが、適切な治療やリハビリを受ければ、完治し、普通に社会復帰ができる。メンタルヘルスケアを行っていれば、避けられた事故は少なくないはずだ」とする。
     抗鬱薬や抗不安薬は眠気を引き起こすので、経営者はドライバーには使わせたくないと考えるかもしれないが、「眠くならないように調整して、業務を行いながらの治療も可能」だという。実際にパニック障害で横山氏の治療を受け、運行もする運送会社の経営者のケースでは、適切な薬物療法とケアにより、仕事をしながら、しっかり治った。
     横山氏が、さらに注意を呼びかけているのが従業員の自殺だ。「メンタル面の不調を起因として従業員が自殺した場合、遺族が訴えを起こすと、昨今の判決では会社側の賠償額が1億円前後にまでなっている」と説明。「これは会社の支払い能力とは関係なく、裁判所が決めるものなので、中小の運送会社でも起こり得る。運送会社で万一、このような不幸な事例が出てしまったら、会社が潰れてしまいかねない」と話している。
     横山氏は「運送業は大きなトラックを運転し、事故があれば、自分の命だけではなく、他人の命も巻き込んでしまう。問題が大きくなる前に、早めにメンタルヘルスケアに取り組んでもらいたい」と訴える。
    ◎関連リンク→ さっぽろ駅前クリニック

     
     
     
     
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