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物流ニュース
キリングループロジ山田崇文新社長 「人」が何よりも大切(後編)
2020年6月9日
「あの広いアメリカで、2工場でしかビールを作っていないから、品切れはしょっちゅう発生する。また、現地採用の日本人と日本語で話しているのに、環境の違いからコミュニケーションがうまくいかないことも多々あった」と振り返る、キリングループロジスティクス(東京都中野区)の山田崇文社長。そうした苦労から、「ロジスティクスの大切さや、ビジネスの根本を学んだ」という。
アメリカでは主に日系の飲食店へのキリンビールの売り込みを手掛けていたが、その中でも、シャリシャリ食感が楽しめるマイナス5度の冷たい一番搾りフローズンを、アメリカのディズニーワールドやドジャースタジアムに導入したことは話題を呼び、今でも同社長の心に残っている。
アメリカ勤務を終えて日本に戻ると、九州に赴き、販売部門のスタッフのリーダーとして充実した2年を過ごしたという。「九州では地元愛に触れ、素晴らしい体験だった」。
その後、2018年に本社マーケティング部の主幹として、営業部門の予算の振り分けや計画を進めるといった、会社の営業全体をみる立場となった。そして、今年3月に同社の社長に就任する。
30年近く営業畑を歩んできた同社長は、「今の物流課題は、物流部門だけで解決できるものではないほど大きくなっている」と指摘。その上で、今回の自身の物流部門への人事について、「自社だけでは解決できない課題を、グループの事業会社やホールディングスと連携して解決していくというメッセージとして捉えた 」という。
キリンホールディングスの全体像をどうしていくか考えた時、「商品開発をするマーケティング、モノづくりをする製造部門、営業部門が物流に対して、『運ぶことに関しては、全てお任せします』 という関係では、これからの物流は立ち行かなくなる。作る側も売る側も、頭の片隅につねに『運ぶ』ということを念頭に置いてサプライチェーンの各段階を考えていかなくてはいけない」と話す。
外販の扱いについても、大きく流れが変わりつつあり、最近の動向としては、物流子会社では、ドライバー不足・高齢化を受け、自社グループの品物の輸送に注力していく方向に回帰している。
同社長もこうした動きを感じているが、「外販は事業そのものとしてはもちろん、自社グループ物流の波動吸収や、帰り便の積載率アップなど、さまざまな目的がある。まずは現状を棚卸しし、今後どういう方向で進めるのか検討していきたい」 とし、経営方針の「運びきる」を今後も中心に据え、輸送協力会社と密にコミュニケーションを取るなど、輸送体制強化を図っていくとしている。
また、今回の新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、「見えてきた課題もある」と同社長。同社では、在宅勤務を可能な限り実施するほか、出荷拠点などの現場では休暇をローテーションで取る、出社人数を絞るなど工夫をした。
今後は従業員や関係者の安全を最優先としつつ、会社機能を維持し、社会的な役割を果たしていくこと自体が、新たな最重要課題になってくると、同社長はみている。
2018年に設定した2019年中期経営計画では、2021年末のビジョン実現を目指しているが、物流環境の変化が厳しさを増していくことが予想され、前倒しで計画を立てていく方向で動いている。「人」が何より大切だという同社長の抱負は、自身の入社理由のような、「入社したいと思える会社、いきいきと働き、成長できる会社」を目指すことだ。
◎キリングループロジ山田崇文新社長 「キリン品質」さらなる向上へ(前編)
◎関連リンク→ キリングループロジスティクス株式会社
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