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物流ニュース
福岡運輸 富永泰輔社長「周りがうらやむ会社に」
2020年10月13日
在日米軍の依頼を受け、昭和33年に国内で初めて国産の冷凍車を走らせた福岡運輸(福岡市博多区)は、定温輸送のパイオニアとしてこれまで、業界をけん引してきた。今、同社を陣頭指揮するのが富永泰輔社長で、創業者富永シヅ氏の孫だ。
富永社長は、平成10年4月に大学卒業と同時に同社に入社する。後継者として、同社長の父親もいたが、昭和53年に不慮の事故に遭い、41歳の若さで他界する。そのため、平成10年当時、非常勤の相談役として祖母であるシヅ氏がいたが、経営陣に身内がいなかった。大学卒業と同時にすぐに家業に入ったのも、そうした理由があったからだという。
一社員として入社した同社長は、川崎市にある東京支店に勤務、社会人の第一歩を踏み出した。
しかし、入社して2年後の平成12年、海外留学を経て、政治の世界へ飛び込む。国会議員の秘書を経験し、自らも国会議員に立候補するなど、政治の世界に4年間を費やした。
ただ、その間も、非常勤の取締役として、同社の毎月の会議には出席し、内容は把握していたという。
平成17年に政治の世界から離れ、常勤の取締役として同社に戻ると、当時、本社機能を置いていた佐賀県基山町に勤務し、経営に参画する。
翌18年には、福岡運輸ホールディングスを設立し、ホールディングス制を導入。それまで事業部だったものを福岡運輸、福岡運輸システムネットに分社化した。責任の明確化や上層部のやる気を引き出すためでもあった。しかし一方で、分社化することで、グループとしての一体感を出すことの難しさもある。
平成24年に福岡運輸の社長に、そして翌25年にホールディングスの社長に就任し、名実ともに同社のトップとしてマネジメントを行っている。
「冷凍車を初めて走らせた頃は、市場は競争相手のいない、まさにブルーオーシャンで、やりたいことが何でもできる時代だった」と話す同社長だが、その後、冷凍車の開発、普及が進むと同業他社の参入が相次ぎ、競争は激化。第一人者としての優位性はあったが、順風満帆ではなく、むしろ厳しい経営環境が続いたという。
現在、主力である定温輸送が、全体の8割を占めている同社にあって、今後の事業展開について同社長は、「2つの柱で展開していく」という。
一つ目が、それぞれのグループ会社が事業規模の拡大や、収益を上げるなど、個々に成長するということで、2つ目がM&Aだ。「ドライバー不足や倉庫作業員不足など、人材不足が顕著になる中で、自社のみで事業を拡大させていくのは時間的に限界がある」という同社長。
「定温輸送にこだわらず、お互いにメリットの出るいい相手がみつかれば、どんどんM&Aを行っていきたい」と明確だ。
北は北海道、南は鹿児島まで、全国に倉庫や配送センターなどの拠点を構えて営業を展開している。
グループ会社は11社まで増えた。福岡運輸グループでの売り上げは467億円(令和2年3月期)を計上、従業員1192人、トラックの保有台数も659台と拡大を続けている。
しかし、ただ規模を追い求めているわけではない。
同社長の目的は、「福岡運輸グループをいい会社にすること」だ。
いい会社という表現は抽象的だが、わかりやすく例えると、「働いている従業員が、周囲からうらやましがられるような会社にすること」。そのためにも、規模は必要であるし、企業イメージも大切だと、同社長は指摘する。
同社をいい会社にすることが、ひいては、物流業界全体の地位向上につながっていく。
同社長の目指すものは単純明快だ。
◎関連リンク→ 福岡運輸株式会社
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